半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

消費低迷のマクロ経済分析
-「消費低迷不安説」を超えて
松田久一・経済分析チーム

構成
第1章 本稿の狙いと構成

第2章 90年代における消費動向の再検証

(1)消費に対するふたつの見方
(2)なぜふたつの見方が生まれるのか
(3)SNAと家計調査のデータはなぜ違うのか
(4)90年代の消費をどうみるか

第3章 ライフサイクル恒常所得仮説型消費関数による実証分析
(1)消費・所得データ系列の作成
(2)ライフサイクル恒常所得仮説に基づく消費関数の推定
(3)推定結果のインプリケーション
(4)1997年以降の説明力低下の要因
(5)結論-90年代消費低迷へのインプリケーション

第4章 消費資産価格モデル(C-CAPM)による実証分析
(1)消費資産価格モデル(C-CAPM)
(2)先行研究の成果と問題点
(3)90年代における消費低迷の要因を検討するための実証分析
(4)C-CAPMから見た消費低迷の要因

第5章 総合的分析と提言
(1)現在の低リスク社会の維持戦略
(2)高リスク社会への転換戦略 参考文献

第1章 本稿の狙いと構成
 決算期になると、毎年、危機がやってくる、という日本経済はいまやかつてない状況に追い込まれている。日本の名目GDPは98年以降3年連続のマイナス成長を記録し、2001年に入っても回復の兆しがみえない。経済回復策として、必ず、不良債権処理や金融緩和などの金融政策と財政赤字下の財政出動が検討されることも年中恒例行事である。本稿は、政策的な「手詰まり」のなかで、経済政策のなかで少々等閑視されがちな消費に問題の焦点をあて、生活者と産業の視座から、消費問題を分析し検討したい。
 消費を論じるにあたって、GDPの6割を占める消費を巡る議論に内在している以下のような問題点を、看過ごすことができない。
 第一に、90年代の日本の消費をどうみるかについて、実は定まった見方というものがないことである。それは、内閣府「国民経済計算(SNA=System of National Accounts以下SNAで表す)」と総務省「家計調査」との間で家計の消費支出データに乖離がみられるためである。乖離の原因については、岩本・尾崎・前川(1995)等の研究がみられるが、未だ未解明な部分が残されている。消費支出の乖離は、データ上の表面的な不釣り合いないしパズルを越えた根深い問題をはらんでいる。というのも、個人消費が伸びているのかそうでないのかどちらとも判断がつかないようだと、90年代の消費動向に対する評価も下せないばかりか、ひいては日本経済の回復に必要な施策の中身も定めようがないのである。
 第二に、仮に消費の見方についてコンセンサスが得られたとしても、「マクロとしての消費をいかに増やすのか?」という観点でしか論じられていないことである。例えば平成13年版経済財政白書では、消費低迷の基本的な要因を将来への不安に集中させ、将来への備えから現在の(マクロとしての)消費を抑えている、というスタンスに立っている。したがって、現在の個人消費を伸ばすためには家計の先行き不安を払拭する必要があり、先行き不安払拭の秘策こそが構造改革である、という政策的帰結が導かれることになる。ところが皮肉なことに、今や構造改革そのものが中身の定かでない空手形に過ぎず逆に先行き不安を煽っている、という批判すら噴き出しかねない始末である。こうした政策論議の空虚さは、マクロとしての消費にだけ注意を払っていることによって、現在の消費を増やすには、その原資である所得を増やすか、今使わせるように促せばよい、という単純な帰結しか導き出し得ないことに由来している。
 そこで本稿では、90年代の日本の消費動向をより精緻に分析して消費低迷の要因を明らかにするとともに、対処療法的な消費回復策という観点ではなく、現在の我々が直面している消費社会の構造変化という観点から消費回復策を検討した。
 本稿の構成は、次の通りである。第2章では、90年代の消費動向を再検証し、90年代の消費動向についてひとつの見方を提示した。続く第3章と第4章では、90年代の消費の変動要因を実証分析によって解明した。第3章では、ライフサイクル恒常所得仮説(LCY-PIH)をベースとするHayashi型消費関数を推定し、推定結果より導かれるインプリケーションに基づき、90年代の消費の変動要因を評価してみた。第4章では、消費資産価格モデル(C-CAPM)に基づくオイラー方程式の推定を行い、推定結果より導かれるインプリケーションに基づき、90年代の消費の変動要因を評価してみた。最後に第5章では、本稿で得られた分析結果に基づき、90年代の消費低迷の要因を総合的に分析し、消費回復策について考察を加えることとする。

 本コンテンツの全文は、メンバーシップサービスでのご提供となっております。
 以降の閲覧にはメンバーシップサービス会員(有料)ご登録が必要です。

メンバーシップサービス会員のご案内についてはこちらをご覧ください。
メンバーシップサービス会員の方は、下記をクリックして全文をご利用ください。

お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

2024.04.22

JMR生活総合研究所 ゴールデンウイーク期間中の営業のお知らせ

新着記事

2024.04.23

24年2月の「旅行業者取扱高」は19年比で78%に

2024.04.23

24年2月の「広告売上高」は、3ヶ月連続のマイナス

2024.04.22

企業活動分析 カルビーの23年3月期は需要堅調もコスト高吸収できず減益に

2024.04.22

企業活動分析 亀田製菓の23年3月期は国内外好調で増収もコスト増で減益着地

2024.04.22

企業活動分析 大正製薬の23年3月期はOTCなど好調で増収増益

2024.04.19

企業活動分析 森永製菓の23年3月期は、「inゼリー」等好調で2年連続最高益更新

2024.04.18

24年2月の「商業動態統計調査」は36ヶ月連続のプラスに

2024.04.17

24年3月の「景気の現状判断」は14ヶ月ぶりに50ポイント割れに

2024.04.17

24年3月の「景気の先行き判断」は5ヶ月連続で50ポイント超えに

2024.04.16

24年2月の「家計収入」は17ヶ月連続のマイナス

2024.04.16

24年2月の「消費支出」は12ヶ月連続のマイナス

週間アクセスランキング

1位 2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

2位 2024.04.03

24年3月の「乗用車販売台数」は3ヶ月連続の2桁マイナス

3位 2022.05.10

消費者調査データ エナジードリンク(2022年5月版) 「レッドブル」「モンスター」認知率拡大、上位の牙城揺るがず

4位 2013.03.22

MNEXT ビックカメラによるコジマの買収はメーカーを巻き込んだ衰退業界再編の始まり

5位 2016.03.16

【マーケティングFAQ】どうすればブランド力を強化できるか

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

採用情報 J-marketing活用法

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area