半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net


(2017.10)
月例消費レポート 2017年10月号
消費回復は堅調さ保つ-マインド復調で回復の裾野を広げられるか
主任研究員 菅野 守

 JMR消費INDEXは、2017年6月時点まで、上昇傾向を保っている(図表1)。INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、支出水準関連指標では2017年6月以降、悪化に転じる項目が徐々に増え、2017年8月現在では3項目全てが前年同月比で悪化となっている。他方、販売関連指標では、2017年8月時点で判明している9項目中、改善が5項目、悪化が4項目となり、再び改善の側が優勢な状況に戻っている。消費の動きは、支出水準関連指標と販売関連指標とで変化の方向が分かれたまま、方向感が定まらずにいる(図表2)。

 公表された2017年8月以降の各種経済指標から、消費を取り巻く状況を整理すると、消費支出は、2017年8月現在、実質ではマイナスに転じたが、名目ではマイナス入りを回避している。10大費目別にみると、実質ではマイナスの費目数の方が上回ってはいるが、名目ではプラスの費目数の方が多い。費目間での好不調の格差は、名目と実質の双方で鮮明となっている(図表5、図表6)。他方、販売現場での動きとして、2017年8月現在、商業販売や外食などの日常生活財は総じてプラスを保ち、改善の動きが進んでいる(図表11、図表15)。耐久財のうち、新車販売では、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、引き続きプラスを保っている。新設住宅着工戸数では、全体は引き続きマイナスとなっているが、分譲マンションを中心に一部の領域はプラスに転じている。家電製品出荷も概ねマイナスとなっているが、伸び率の値は総じて、前月よりも改善している。耐久財では、カテゴリー間で好不調が分かれつつ、不調なカテゴリーでも改善の兆しがみられる(図表12、図表13、図表14)。雇用環境は、有効求人倍率と完全失業率のいずれでみても、息の長い盤石ぶりをみせている(図表8)。収入環境についても改善の動きがみられ、現金給与総額、所定内給与、超過給与額の全てが、2017年8月速報値ではプラスとなっている(図表9)。ただし、消費マインドは、景気ウォッチャーと消費者態度指数ともに、2017年8月は再び低下に転じており、一進一退の状況が続いている(図表10)。

  経済全般の状況に着目すると、輸出は改善の動きを続けている。生産も、上昇傾向を保っている(図表16、図表18)。マーケットの動向をみると、為替と株価は、2017年8月上旬から9月上旬にかけて円高・株安の傾向にあったが、9月上旬から10月初旬にかけては円安・株高に転じている(図表21)。長期金利は、8月に入ってから低下の動きが続き、9月初旬には一時マイナスへと落ち込んだ。その後、長期金利は上昇に転じたが、10月に入り上昇の動きも一旦落ち着いている(図表22)。

 消費に関しては強弱両方の材料が交錯したまま、足踏み状態が続いている。盤石な雇用環境と良好な収入環境を背景に消費は堅調さを保っている。消費の中身を見ると強弱両方の材料が交錯してはいるが、不調なカテゴリーでも改善の兆しがみられる。輸出と生産の改善が続く中、為替と株価は円安・株高へと転換し、長期金利も上昇の動きが沈静化していることは、景気や消費の先行きにとって追い風である。この先、消費回復の足取りをより確かなものとするには、立ち遅れが目立つ消費マインドの復調を足掛かりとして、消費回復の裾野を更に広げられるかが、鍵となってくるだろう。

図表を含めた完全版はこちら
【完全版を読む】(有料会員向け)

※会員のご登録はこちらをご覧ください。

参照コンテンツ


おすすめ新着記事

消費者調査データ コーヒー飲料(2024年3月版)独走「BOSS」、「ジョージア」との差を広げる
消費者調査データ コーヒー飲料(2024年3月版)独走「BOSS」、「ジョージア」との差を広げる

プラスが続くコーヒー飲料の市場についての調査結果をみると、23年調査に引き続き「BOSS」が全項目で首位を獲得、さらに2位の「ジョージア」とは、3ヶ月内購入で差を広げた。「BOSS」はエクステンションの「BOSS CRAFT」も高評価で、リーディングブランドとしての存在感を示している。

成長市場を探せ 3年連続で過去最高更新、拡大する麦茶飲料(2024年)
成長市場を探せ 3年連続で過去最高更新、拡大する麦茶飲料(2024年)

健康志向などを追い風に堅調な動きを続ける茶飲料市場のなかで、特に伸びている領域がある。3年連続で過去最高を更新した麦茶飲料だ。背景にあるのは、気候温暖化による毎年のような猛暑と、熱中症対策意識の高まりだ。

消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い
消費者調査データ カップめん(2024年3月版)独走「カップヌードル」、「どん兵衛」「赤いきつね/緑のたぬき」が2位争い

22年度、過去最高を更新した即席めん市場。その多くを占めるカップめんについての調査結果をみると、「カップヌードル」が絶対的な強さを示し、それを「赤いきつね/緑のたぬき」「日清のどん兵衛」が追う展開となった。一方で、節約志向を背景に、コストパフォーマンスに優れるPBの再購入意向も高い。



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツ プレミアム会員サービス 戦略ケースの教科書Online


新着記事

2024.03.21

24年1月の「旅行業者取扱高」は19年比で69%に

2024.03.21

24年1月の「商業動態統計調査」は35ヶ月連続のプラスに

2024.03.19

24年2月の「景気の現状判断」は12ヶ月連続で50ポイント超えに

2024.03.19

24年2月の「景気の先行き判断」は4ヶ月連続で50ポイント超えに

2024.03.18

成長市場を探せ 3年連続で過去最高更新、拡大する麦茶飲料(2024年)

2024.03.15

企業活動分析 スギHDの23年2月期は増収減益。26年度売上1兆円へ向けた挑戦が続く

2024.03.14

24年1月の「消費支出」は11ヶ月連続のマイナス

2024.03.14

24年1月の「家計収入」は16ヶ月連続のマイナス

2024.03.13

戦略ケース なぜマクドナルドは値上げしても過去最高売上を更新できたのか

2024.03.12

企業活動分析 マツキヨココカラカンパニーの23年3月期はPB商品拡販やインバウンド需要増加で増収増益

2024.03.11

23年12月の「現金給与総額」は24ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

週間アクセスランキング

1位 2024.02.15

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 男性子育て層の約5割が利用 バンドワゴン効果で拡大する新NISA

2位 2023.12.27

2024年の日本を読み解く―24の視点

3位 2024.02.22

消費者調査データ No.402 RTD(2024年2月版) 「ほろよい」「氷結」「贅沢搾り」 熾烈なトップ争い

4位 2016.03.16

【マーケティングFAQ】どうすればブランド力を強化できるか

5位 2021.10.14

都心主要ラグジュアリーホテルのリバイバル戦略と行動直結プロモーション―産業衰退死段階の生き残り戦略【1】

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area