JMR消費INDEXの中長期的な近似曲線は、2018年9月頃より、低下の勢いに拍車がかかっている。直近では、2019年10月以降、数値は50を大きく割り込み、過去最低水準近傍での低迷が続いている(図表1)。
INDEXを構成する個々の変数の動きをみると、2020年1月は、外食関連の2項目以外のすべての項目で、悪化となっている(図表2)。
消費を取り巻く状況を整理する。消費支出の伸びは、2019年12月以降、名目と実質ともにマイナスが続いている(図表5)。10大費目別では、2020年1月時点で、名目と実質の双方でマイナスが大勢となっている。マイナスの側が優勢な状況は、2019年12月よりも強まっている(図表6)。
販売現場での動きをみてみる。日常財のうち、外食全体の売上の伸びは2019年11月以降、プラスが続いている。2020年1月には、主要な業態全てで伸びがプラスとなっている(図表15)。
小売業全体の売上の伸びは2019年10月以降、マイナスが続いている。主要な業態別では、コンビニエンスストアはプラスを保っているが、百貨店とスーパーは前月と同様にマイナスとなっている(図表11)。
耐久財のうち、家電製品出荷の伸びは、黒物家電では2019年11月以降プラスが続いている。一方、白物家電では製品により好不調が分かれている(図表13)。
新設住宅着工戸数の全体の伸びは、2019年7月以降マイナスが続いている。カテゴリー別では、2019年12月以降、持家、分譲住宅・マンション、分譲住宅・一戸建ての全てで、伸びはマイナスとなっている(図表14)。
新車販売の伸びは、2019年10月以降、乗用車(普通+小型)と軽乗用車ともに、マイナスが続いている(図表12)。
雇用環境について2020年1月時点では、完全失業率、有効求人倍率ともに、悪化となっている(図表8)。
収入環境について、現金給与総額と所定内給与額の伸びは、2020年1月時点でプラスに戻した。超過給与の伸びは2019年9月以降、マイナスが続いている(図表9)。
消費マインドについて、2020年2月時点では、消費者態度指数と景気ウォッチャー現状判断DIはともに、前月よりも低下している。特に、景気ウォッチャー現状判断DIでは、2011年3月の東日本大震災や2014年4月消費税増税に次ぐ、近年に類例のない大幅な落ち込みをみせている(図表10)。
経済全般の状況として、輸出の伸びは2018年12月以降、マイナスが続いている(図表16)。
生産について、鉱工業全体の指数は、2019年11月を底に上昇を続けているが、その戻りは鈍い(図表18)。
マーケットは、株安、債券安、円安のトリプル安に見舞われている。
株価は2020年2月下旬以降、下落の動きに拍車がかかった。2月上旬から3月中旬までの間に、株価の水準は、23,600円台から16,500円台まで落ち込んだ。1ヶ月余りの間で-30%強という落ち込みは、リーマン・ショック前後の時期に匹敵する(図表21)。
円ドル為替レートは、3月上旬以降、円安基調に転じている。
長期金利は2020年2月末頃を境に上昇へと転じ、3月13日以降はプラスに復帰している(図表22)。
総合すると、消費は2019年10月からの消費税増税以降、年明け後も低迷を続けている。大型耐久財を筆頭に、消費の落ち込みが目立っている。
雇用環境と消費マインドは悪化に転じており、特に消費マインドの落ち込みは、近年類例のない大きさだ。株安、債券安、円安のトリプル安のマーケットは、特に株価の落ち込みが、リーマン・ショック前後の時期に匹敵する規模となっている。
消費マインドやマーケットなどが先取りしている日本の景気や消費を取り巻く状況の厳しさは、今後公表される2020年2月の各種統計指標からも、一層はっきりとしてくるはずだ。
日本の景気や消費に、想定外の大ダメージを与えることとなった最大の要因が、新型コロナウィルスの感染拡大である。
感染拡大による経済へのマイナス・インパクトは、グローバルにみても、リーマン・ショックに匹敵するものとなりつつある。
旅行やレジャー、イベントなどへの外出の自粛要請には、終焉の兆しが一向に見えない。外食を自粛する動きも根強く、飲食店への客足も途絶えたままとなっている。
2020年夏に開催を予定していた東京五輪も、1年程度の延期が決まった。
政府による新たな経済対策の議論が本格化するのも、これからだ。
日本国内での感染拡大の動きに、収束の目途が立たない限りは、この先、消費の悪化に一層拍車がかかることは避けられないだろう。
参照コンテンツ
- 消費から見た景気指標
- 「食と生活」のマンスリー・ニュースレター
第112号 消費増税ついに「10%」も―駆け込み購入、盛り上がり欠く - 「食と生活」のマンスリー・ニュースレター
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