家電量販店のポイントプログラムとビジネスモデル

2007.04 代表 松田久一

本稿は、「月刊アスキー」2007年6月号掲載記事のオリジナル原稿です。

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生き残り競争の武器

図表1.主な企業のポイント・割引カード発行枚数と利益率
図表

 家電流通業界は熾烈なシェア競争を繰り広げている。2005年度の家電流通市場規模は約7兆6300億円と推定され、上位10社で約64%の市場を占める。さらに、10社の顔ぶれが合併や提携によって毎年変わっている。業界2位のエディオンと同5位のビッグカメラとの提携・合併によってヤマダ電機に代わる新しい業界トップの誕生が話題になり、直後に解消されたことは記憶に新しい。このような熾烈な競争のなかでポイントプログラムが生き残り競争の武器として大きな役割を果たしてきた。ポイントプログラムがもっとも事業の収益に寄与し成功している業界である(図表1)。

02

ポイントプログラムによる顧客囲い込みのビジネスモデル

 家電流通業界のデファクトスタンダードとなっているのは、1989年に、値引き交渉の手間を省くために導入されたと言われているヨドバシカメラの「ゴールドポイントカード」である。このポイントプログラムも他業界と同じように、商品やサービスの購入ごとに金額に応じて一定の還元率でポイントが累積加算され、一定期間内の次回購入時に一定の比率で値引きなどの特典が得られるという仕組みである。このカードの最大の特徴はその還元率の大きさである。通常、現金購入すれば10%のポイントが還元される。預金金利の0.2%前後と比べても、また、他店や他業界の還元率が数%の域を出ないのと比べても極めて大きい。さらに、ポイントで無限回の買い物を続ければ11.1%の値引きになる。例えば、43インチの液晶テレビを約50万円で現金購入すれば5万ポイントが加算され5万円分の値引きがされる。5万円でゲーム機をポイント購入すれば5,000ポイントが加算され、次回購入時に5,000円分が値引きされる。これを繰り返せば10%の還元が11.1%になる。現在では、ヨドバシカメラの会員数は約2,031万人、ビッグカメラは約1,500万人と公表され、ヤマダは約2,000万人以上と推計されるまでに拡大している。