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消費にみる「時は金なり」
不況で時間に関連するサービス業種が伸びている。消費者行動の変化に敏感にうまく乗っているからだ。
不況で変わるのは、雇用や収入だけではない。仕事や勤務時間が変わると、生活のなかの行動も変わる。残業が減って、ゆっくり寝られるので、朝食がしっかり食べられるようになった。最近では「朝カレー」も人気がある。家で食事を準備する時間があるため内食が増え、安全な食材や調味料が売れたりしている。
どんな業種が消費者行動の変化をとらえ、成長機会に結びつけているのか。
消費者の「機会コスト」の観点から分析してみると分かり易い。
機会コストとは、経済学上の考え方で、「もし、何かをせずに仕事をしていたら得られたであろう逸失利益」のことである。
東京の有職者の一時間あたりの平均機会コストは約2,000円である。何かを一時間するには東京では約2,000円の費用がかかる。
コストが1時間あたり2,000円以下の手間や用事は、外部の代行サービスで済ませた方が利益を得られることになる。
つまり、機会コストが高くなれば、外部サービスへの依存が高まり、低くなれば内部化がすすむことになる。
ふだんの生活のなかで省きたい、効率化したい用事、手間や家事はたくさんある。なかでも、従来の音楽・映像のレンタルサービスほど時間の効率の悪いものはない。
特に、レンタルしたDVDやCDの返却は、手間がかかる。ただ返却のためだけのレンタルショップへの往復は、まったくプラスのないコストだけになる。東京の都心で、約500円の新作のDVD1本をレンタルし、ショップへの往復時間を1時間とすれば、DVDを借りて返却するまでにかかるコストはおよそ2,500円になる。
それに比べて今注目されているのがNHKや民放各社の有料コンテンツ配信サービスや、ツタヤディスカスなどのオンライン宅配レンタル・配信サービスである。返却の便利な音楽・映像の配信サービスは、放送と通信の融合にともなって期待される分野のひとつであるといえる。
さらに、より詳しく家事についてみてみる(図表1)。具体的には、調理、食料品・衣料品・生活用品の買い物、掃除、洗濯・アイロンがけ、ペットの世話、自家用車の維持管理の六つである。これらの家事に費やされる時間は73時間、平均機会コストは1時間あたりで1,963円、1ヶ月あたりでは13万5,110円になる。