家電量販店の再編が再び始まった。業界5位のビックカメラが、業界7位のコジマの141億円の増資を引き受け、コジマの株式の過半数を握る実質的な買収である。その結果、ビックカメラ・コジマグループは約9,000億円の売上となり、業界第2位に躍り出る。
これを契機に、再び、家電量販店の再編が進み、主要8社の情報家電メーカーに新たな対応が迫られる。
国内のIT、情報通信、家電等の主に家庭用の情報家電流通市場は、2012年度で約8兆円と推定される。この10年で、ヤマダ電機等の家電量販店の売上比率は49%から66%へと17%高まり、過半を占める。家電量販店の中ではヤマダ電機の売上が2010年度で33%に迫る。大手量販の寡占化とヤマダ電機の独走の中、家電量販各社は生き残りをかけ、吸収や合併などの再編を繰り返してきた。
その理由は、生き残りの鍵である、低コスト優位に立つためである。家電量販店の競争は、立地、品揃え、価格、アドバイスなどの接客等である。しかし、決め手は価格である。主に、店舗運営等のコストと情報家電メーカーからの仕入れコストである。前者は、スケールメリットが作用するので、規模が大きいほどローコスト運営ができる。買収により管理や物流等の間接部門のコスト削減効果が期待される。もうひとつは仕入れコストの低下である。売上規模が大きいほど、メーカーからの購入数量が増え、値引き交渉力が大きくなる。ヤマダ電機は、テレビ等の主要製品の売上シェアがほとんどトップである。メーカーにとっては、自社製品の少なくとも20%以上を占める取引先である。ヤマダ電機の売上が50%以上を占める製品もある。メーカーが数量リベート制を採っているので、購入数量が大きくなれば、量販店は他社よりも安く仕入れることができる。それは量販店の利益にもなり値引きの源泉となる。今回の買収は、買収しても約2倍の売上を誇る業界トップのヤマダ電機に引き離されないためであり、他量販店よりもさらに低コスト優位につくためである。