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(2004.05)
キリンとアサヒのオープン価格導入
-新取引制度は乱売市場に抑止効果をもたらすか
戦略分析チーム 川口



 キリンビールは2004年1月、「2004-2006年キリングループ中期経営計画」において、2005年1月からビール・発泡酒の希望小売価格を廃止し、オープン価格を導入することを発表した。この際、同社の荒蒔康一郎社長は「業界全体で最適な利益を確保する環境を整備したい」と語った。これは1997年にサッポロビールが初めて事実上のオープン価格導入を表明した時に、キリン、アサヒ、サントリーの大手3社が追随しなかったため、製販のパワーバランスを背景に流通業者が強く反発したことによって約2週間で撤回を余儀なくされた経緯を踏まえたものだ。3社は慎重な姿勢を表明したが、遅れること3ヶ月、アサヒが追随することを発表した。トップ2社が制度改革に着手したことにより、安売り競争が常態化し、建値と実勢価格の乖離が大きかったビール・発泡酒の「悪しき商慣習」是正の契機となるのか、今後の展開が注目される。
 ビールや発泡酒などの販売価格は、メーカーが卸売業者に販売する「メーカー出荷価格」、卸売業者が小売店に卸す「希望卸売価格」、そして小売店が消費者に売る「希望小売価格」の3段階があり、これまではそれぞれについてメーカーが価格を決定していた。しかし、現在の店頭での販売価格はビールの場合、1缶(350ミリリットル)218円の希望小売価格に対して、量販店などでは180-190円前後となっており、希望小売価格は有名無実化している。
 こうした店頭での値引き競争の原資となっているのがメーカーから流通業者に支払われるリベートである。ビール会社のリベート体系は現在、販売量に応じて支払う数量リベートと物流合理化や情報提供(販売データのフィードバック)といった卸売業者の努力や機能に対するものの2本立てになっているが、全体の約8割は数量リベートである。つまり値引き競争に勝ち残るため、小売業者は仕入れ値とほとんど変わらない価格で大量販売する。それに伴い卸売業者は小売への納入価格を希望卸売価格よりも下げざるを得なくなり、その利益を補填するためにメーカーに数量リベートを要求して経営を成り立たせてきた。

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