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(2015.04)
アリババはいかに巨大企業になったか
プロジェクト・チーフ 張 暁霖



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プロローグ

 2014年9月19日、中国の電子商取引(EC)最大手のアリババ集団が、米ニューヨーク証券取引所に上場した。新規株式公開で調達した資金は250億ドル(約2兆7,000億円)に及び、ニューヨーク証券取引所過去最大のIPO案件となった。さらに、上場してすぐの株式に買い注文が殺到し、2014年10月1日時点、時価総額2,120億ドル(約23兆3,000円)に達し、1999年創業の若いアリババは、アップル・マイクロソフト・グーグルに次いで企業価値が世界4位のIT企業となった。

 アリババといえば、日本では、一般的にB2Bのマッチングサイトであるアリババドットコムが有名だが、本日のアリババを支えているのは、紛れも無くC2Cサイトの「タオバオ」とそこから派生したB2Cサイト「Tモール」である。両者における2013年の年間総流通額は、約250億ドル(24兆円弱)規模に達している。日本の小売市場全体の規模が約141兆円と言われており、たった一企業がその17%を占めるとすればその巨大さを容易に想像できるであろう。

 では、アリババをここまで成長させた原動力とはなにか。結論を先に言えば、互いに密接に関連する三つの要件がある。まずは、「信用保証」をコアにしたエコシステムの確立。ふたつ目は、顧客定義の巧妙さ。最後は、創業者ジャック・マー(馬雲)の経営理念。そして以上三つの要件がうまく機能する前提条件としての中国の特殊な流通環境が存在する。

 本稿は、アリババの発展の歴史を順次に追いながら、アリババの成功要因とその背景を説明していきたいと思う。


1.ジャック・マーのビジョン

 2005年、アリババ各サイトのバイヤーが集まる大会の演説の中で、ジャック・マーは自ら考えるECビジネスを成功させるために必要な五つの要素を話した。その後から本日に至るアリババの展開が、まさにこの時彼が示したビジョンの延長線上にある。

 ひとつ目は「信用保証システム」。2005年当時でも現在でも中国企業が取引先の信用問題で巨大な経営コストを抱え、チャンスロスをしている。今すぐ13億人の全てを誠実な人に出来なければ、アリババが誠実さの担保になるというのがジャック・マーの発想である。いまでも、アリババの社訓には「誠実であれ」の一文があり、信用スキャンダルを起こした幹部は、どれほど有能であろうか即クビにするという風に徹底されている。また、この信用保証システムこそがアリババの競争優位のコアでもある。

 ふたつ目は、ネットを介するマーケット。アリババの経営理念は「世の中からできないビジネスを無くそう(譲天下没有難做的生意)」となっており、まさに自ら小売セラーになるのではなく、ネットにおけるビジネス基盤の整備に専念するという自社ドメインの定義という風に理解できる。この点は楽天に少し似ている。

 三つ目は、検索エンジンとしての機能。四つ目は、オンライン取引を円滑化するためのソフトウェア基盤。このふたつの要素は、ECを可能にする技術的基盤である。アリババは、創業時当時アルゴリズムにおける優位を持っているわけではなかった。ビジネスモデルの優位性で当時市場を先行した易趣(eBay中国)を圧倒して後、ヤフー中国の買収やアリソフト・アリ研究所の設立を通じ、徐々にその弱みを克服してきた。

 五つ目は、決済システム。2005年時点では、ジャック・マーはまだ決済を信用保証システムの補完として考えていた。翌2006年に、Tモールの誕生と共に、決済システムが名実ともにアリババの収益源となっていく。

 この五つの要素を総合的にみれば、ジャック・マーのビジョンの全貌が浮かび上がってくる。つまりアリババは、「全ての商業活動をネット化させ、そのための基盤を提供することによって利益を得る」ことを目指している。これは、グーグルの「全ての情報のネット化を通じ、グーグル=情報そのものの構造を作り出そう」の努力に近いものがある。アリババは「ネット流通時代における市場(しじょう)そのもの」になることを目指している。

 優れたビジネスモデルビジョン以外に、マネジメントについても、ジャック・マーは独自な見解をもっている。

 アリババは、16年という短い期間に4,000%も成長した企業で、現在においても組織づくりが会社の成長に追いつけていない。さらに、年間40億ドルを超える金額のM&Aを繰り返しているため、全体の組織構造が非常に複雑である。それでも全く機能不全を起こさずに、全体戦略を実施できた。スモールチームの効果最大化というジャック・マーの組織論が果たす役割が大きいと思われる。

 ジャック・マーが理想とする組織は、2:7:1型組織という。2割が優秀な社員(この2割のトップマネージャーは世界の有力企業からヘッドハンティングされることも多い)、7割が普通の社員、残り1割が毎年やめて行く社員。そして、彼がいう優秀な社員とは、「羊の群れ(普通の社員)をライオンに変えられる」人のことである。個人がいくら優秀でもその能力に限界がある。しかしチームがうまく機能すれば、無限な力を発揮できる。ジャック・マーは自分のマネージャーに個人の有能さよりも、チームリーダーとしての資質を強く求めている。そのために、[1]明確な共通目標の共有、[2]権限の明確化と権限に伴う情報共有、[3]できるだけシンプルかつ分かり易いルール、この三つのポイントの厳守をマネージャーに要求しているという。ジャック・マー自身も会社全体の方針や取り組み目標もできるだけ分かりやすく、親しみやすい形で伝える努力をしている。例えば、創業初期に経営理念を「独孤九剣」や「六脈神剣」など有名の時代小説に登場する必殺技の名前に因んで説明している。

 ジャック・マー自身が同時代の有名なIT企業の経営者たちのように輝かしい学歴をもっているわけではない。そのような状況が、逆に普通の人で一流のパフォーマンスを出す仕組みづくりに寄与しているのではないかと思われる。


アリババを支えるエコシステムの構築。アマゾンや楽天との違いとは? 
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