小売業のバイヤーのメーカー営業マンへの要望事項は実に多彩だ。食品や日用雑貨を例にとれば、常に「何か目新しいものを提案してくれ」と言っていた傍から「確実に売り上げの稼げる売れ筋を提案してくれ」といった具合だ。バイヤーの真のニーズを捉えた提案営業を行わないと振り回されて終わってしまう。バイヤーは、他店でやっている手垢のついた商品や売り方には面白みを感じず興味が持てないし、さりとて売り筋のNB商品を無視できない。バイヤーも混乱している。だからあなたが指針を示しリードするチャンスだ。
今回は、H.Iアンゾフが提示した商品・市場マトリクスを応用した提案営業検討マトリクスを提案する。アンゾフは、既存市場、新規市場と既存商品、新規商品のマトリクスから企業の成長戦略を4つの領域に区分して検討するフレームを提示した。今回提示する提案営業検討マトリクスは、売り手と買い手の情報力でマトリクスを組むものである。改めてマトリクス化することにより、提案発想の切り口を生み出そうというものである。食品スーパーを例にみてみよう。
図表.提案営業検討マトリクス
(1)Aゾーン :相互に既知の状況
鮮魚や野菜などの旬の商材が店頭に出てくる時期は我々にとってもバイヤーにとっても、さらには来店客にとっても既知の情報である。旬の商材を店頭に並べる。ごく当たり前の話だが、このことは軽視できない。来店客の日常性の高い買い物がストアにとってはボリュームを生み出す重点商品なのである。当たり前の商材を当たり前の時期に集中して売り切る。あなたは、特別な販促ツール(販促コスト)を投入せずに店頭でどう売れる状態を作るかを検討して提案すべきだ。つぎに記す生活歳事にのみ目を向けた提案営業は、非日常的な買い物を来店客に提示する売場提案になりかねない。
(2)Bゾーン :メーカー営業マンが情報優位
商品特性、関連商品との組み合わせ、使い方などあなたの方が情報優位にある場合である。このゾーンでの営業は、提案するストアの来店客に目新しさを提案するという視点で発想する。売場の演出に関して、生活歳事やストアの課題を勘案して的確に提案する。
(3)Cゾーン :バイヤー側が情報優位
あまり深入りしないように付き合う領域。逆にバイヤーの考え方を引き出すための話題に活用する。
(4)Dゾーン :相互に未知
コラボレート提案を要する。こちらは育成したい商品をコラボレートできるように進めていく。本社スタッフ(商品開発の担当者など)も巻き込みながら相互の重点目標を設定して取り組み型の営業を進める。
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