半歩先を読む日本最大級のマーケティングサイト J-marketing.net

公開日:2002年09月20日

営業現場の科学
第18回 東京都内の地殻変動-動く商圏を見極めろ!
営業戦略チーム 合田

 都内の主要商業地の地価が上昇している。多くの商圏がパワーを失い低迷する中、魅力ある営業商圏が都心でみられる。

 国税庁がまとめた2002年分の路線価(相続税や贈与税の算定基準となる地価)によれば、全国40地点の標準宅地(住宅地、商業地、工業地を含む)の平均額は前年より6.5%下落し、1平方メートル当たり12万9千円で、10年連続で前年を下回った。東京都、特に区部は下落幅が相対的に小さかったが、同じ都市圏でも、東京都以外の東京圏(埼玉、神奈川、千葉)、大阪圏や名古屋圏などの下落率が大きかった。

 全般的な不振の中、逆に都内の代表的な商業地の路線価が上昇している。上昇した商圏をみると、大きく三つの傾向が確認できる。




(1)ブランド効果によって路線価が上昇した商圏

 中央区では、銀座5丁目(中央通り付近)が1.4%、銀座8丁目が0.7%、渋谷区では神宮前1丁目(表参道付近)が3.2%、東急東横線代官山付近が1.3~2.6%上昇した。これらの商圏は、海外ブランドショップやおしゃれなカフェ・バーなどが軒を連ねる大集客地域である。そのカフェで最近、CAFFE FOGLIO、Yahoo! Cafeなど無線LANのアクセスポイントを設置する店舗が増えてきている。これらの商圏における、消費者の重要な商品選択のてがかりとなるメディアはテレビや雑誌などよりも街で歩く人そのものやネットを通じた情報であり、特定のスポットに集まる消費者を説得する新しいコミュニケーションの仕掛けづくりが必要となってきている。

(2)オフィスビル建設による再開発効果によって路線価が上昇した商圏

 千代田区丸の内2丁目は5.3%、港区品川駅東口付近は4.0%の上昇となった。丸の内周辺では、丸ビルを始め、三菱商事新本社ビル開発、丸の内北口開発、八重洲口北側開発などのプロジェクトが進行中で、一方の品川駅東口では品川インターシティの西隣に三菱がオフィスビルや高層マンションを構える予定だ。これらが完成すれば汐留を始め巨大なビジネスセンターが東京に新しく誕生することになる。これらの商圏は、新たな雇用者を集客し、その雇用者を吸収する料飲店やCVS、専門量販チェーンなど新たな商業施設が重層的に集積される将来有望な市場だ。

(3)交通機関による利便性の向上によって路線価が上昇した商圏

 麻布十番、天王洲アイルなども路線価の上昇がみられる。麻布十番は都営大江戸線・南北線効果、天王洲アイルはりんかい線(新木場-大崎間、全線開通は2002年12月1日)効果による。路線の変化によって、人の移動が急激に変化し、ある商圏の集客パワーを増大させる典型例である。

 路線価の変化は、集客力の変化の現れでもある。都市の動く商圏を見極め、人の急激な移動に素早く反応し、重要な拠点店とメディアを選別し、他社よりも先に営業攻勢をかけ、特定商圏における自社商品のプレゼンスをアップさせる活動がこれからの営業マンに求められるひとつの大切なスキルになると考えられる。



参照コンテンツ


おすすめ新着記事



J-marketingをもっと活用するために
無料で読める豊富なコンテンツ プレミアム会員サービス 戦略ケースの教科書Online


マーケティング用語集

お知らせ

2024.03.25

当社合田執筆の「猛スピードのクルマはいらない」 これからの高齢化社会に必要な“まちづくり”とは何か? そのヒントは欧米になかった!」がメルクマールに掲載されました。

新着記事

2024.04.12

成長市場を探せ ビスケット市場、4年連続プラスで初の4,000億超えに(2024年)

2024.04.11

24年1月の「現金給与総額」は25ヶ月連続プラス、「所定外労働時間」はマイナス続く

2024.04.10

マーケティング用語集 イールドカーブ

2024.04.09

24年2月は「完全失業率」、「有効求人倍率」とも悪化

2024.04.08

企業活動分析 任天堂の23年3月期は主にハードウエアの売上減が響き減収減益

2024.04.05

消費者調査データ ノンアルコール飲料(2024年4月版) 首位は「ドライゼロ」、追う「オールフリー」「のんある気分」

2024.04.04

企業活動分析 NTTの23年3月期はITサービス拡大で増収増益、過去最高更新

2024.04.03

24年3月の「乗用車販売台数」は3ヶ月連続の2桁マイナス

2024.04.02

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 20代男性の内食志向にマッチして伸びる冷凍餃子

2024.04.01

24年2月の「新設住宅着工戸数」は9ヶ月連続マイナスに

2024.03.29

企業活動分析 KDDIの23年3月期は法人向け好調等で増収、過去最高益更新

週間アクセスランキング

1位 2024.04.02

「食と生活」のマンスリー・ニュースレター 20代男性の内食志向にマッチして伸びる冷凍餃子

2位 2023.04.05

日本人の7割はチーズ好き ぜいたくニーズに支えられ伸長

3位 2016.03.16

【マーケティングFAQ】どうすればブランド力を強化できるか

4位 2024.03.28

月例消費レポート 2024年3月号 消費は足踏み状態が長期化している-インフレ見通しや消費マインド改善などによる消費回復の後押しに期待

5位 2024.04.03

24年3月の「乗用車販売台数」は3ヶ月連続の2桁マイナス

パブリシティ

2023.10.23

週刊トラベルジャーナル2023年10月23日号に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事「ラーケーションへの視点 旅の価値問い直す大事な切り口」が掲載されました。

2023.08.07

日経MJ「CM裏表」に、当社代表取締役社長 松田の執筆記事が掲載されました。サントリー ザ・プレミアム・モルツ「すず登場」篇をとりあげています。

ENGLISH ARTICLES

2023.04.17

More than 40% of convenience store customers purchase desserts. Stores trying to entice shoppers to buy desserts while they're shopping.

2023.02.22

40% of men in their 20s are interested in skincare! Men's beauty expanding with awareness approaching that of women

2022.11.14

Frozen Foods' Benefits Are Expanding, and Child-raising Women Are Driving Demand

2022.09.12

The Penetration of Premium Beer, and a Polarization of the Growing Beer Market

2022.06.20

6.9 Trillion Yen Market Created By Women― Will Afternoon Tea save the luxury hotels in the Tokyo Metropolitan Area