消費の高度化

1992.11 代表 松田久一

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 多様化という市場の捉え方に対して、市場の高度化という概念が有効性をもっている。

 家計消費を、生活のために支出が固定されている必需支出といつどこで支出されるかわからない選択支出に分けてみると、その割合は、普通世帯で、ちょうど、50%になっている。伸びているのは、サービス支出だ。

 日本の平均的な勤労者の労働時間は2,100時間、これが1,800時間になると、生活の中で労働時間が占める比重は30%を切ることになる。このことは、生活者にとって、仕事をどうするかよりも余暇をどう過ごすかという課題のほうが切実になることを意味している。

 必需支出と仕事時間のこれまでの段階があった。これからを選択支出と余暇中心の生活の段階つまり消費の高度化と考えたい。商品がモノとしてだけ消費される段階から、ソフトが組み込まれ、サービスが付加され、システムとして提供される段階である。消費は生産との間で時間のズレと空間のズレを生む。それが、市場と流通を創造している。

 日本では、必需支出と仕事中心の生活時間に、モノを提供する時間と空間の場として、1,500の商店街と500の百貨店、1,400の総合スーパーがあった。約3,400の市場の現場があった。そこへ、43,000のコンビニエンスストアが追加された。幾何級数的な増加が起こったのが80年代だった。

 製造業の消費の高度化への対応は、商品を多品種化させることから、商品の前提となるニーズを深堀りし、商品を高度化させることと、商品を流通にどう届けるかから、生活の中にどう組み込まれるかに着目したほうがよいということを意味する。