高齢化が生む自立消費

1998.02 代表 松田久一

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高齢化と「子独立家庭」の時代

 日本の高齢化が急速に進んでいる。97年9月現在の総理府推計では、

  • 65才以上人口  1,973万人  人口比  15.7%
  • 70才以上人口  1,307万人  人口比  10.3%

となっている。1970年には、65才以上の人口構成比が7%であったのと比較すると、このおよそ30年間で約2倍と急増している。日本の総人口がほとんど伸びないなかで急速に高齢化が進んでいる。その要因は、晩婚化、少子化が進み、総人口が伸び悩むなかで、医療などの発達によって死亡率が低下し、平均余命が延びているからである。平均余命は、男性で76才、女性で82才である。また、戦争要因によってベビーブーム期に生まれた「団塊の世代」が21世紀になって高齢化を迎えるという世代交代もある。

 私たちは、既に、7人にひとりが高齢者という、「高齢社会に暮らしている」(総務庁編平成9年版「高齢社会白書」)。2020年には、65才以上人口は約27%になると予想され、4人にひとりは高齢者という時代がやってくる。

 ところが、この「高齢」の定義が極めてあいまいなのである。高齢者とは、通常、65才以上の層として定義される。65才以上は高齢という国連の統計に従ったまでである。その定義は便宜上に過ぎず、身体的及び精神的な成長基準や、職業の有無、年金の受給資格などの明確な指標があるわけではない。実際、人々の半数以上が「高齢」と感じる年齢は、「75才」以上であり、「65才」が高齢と感じる人は、12%にしか過ぎない(弊社、「97年度生活者調査」)。寧ろ、この世に生まれ、育ち、成人し、結婚し、家族をもうけ、子供を育て、子供が独立し、夫が定年退職し、再び夫婦を中心に生活をしている段階(ライフステージ)の層と理解した方が身近でわかりやすい。実際、この定義で調査をしてみると、首都圏では、「子独立層」は22%になる。急速に進む高齢化とは、「仕事の主役から離れ子供に手がかからなくなった」人々の時代なのである。