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ITが変える生活―時間革命
IT(情報通信技術)関連の携帯電話、ノートパソコン、携帯情報端末(PDA)、デジタルテレビ、情報家電などが生活に浸透している。これらの製品の大きな特徴は、インターネットを通じて様々な家族、学校、会社や地域などのネットワークにアクセスできることである。インターネットの利用者率は、全国で約35%、首都圏では約66%に上る。さらに、全国平均の平日の利用時間は約83分、首都圏では約124分と推定される。限られた24時間のなかでインターネット利用が増えた結果、減ったのはテレビの視聴時間と睡眠時間である。インターネットが確実に生活に浸透し定着している。インターネットが生活に浸透していくなかで、さらに、xDSL、FTTH、無線LAN等の回線の高速化、ブロードバンド化が進んでいる。
戦後、洗濯機や冷蔵庫などの家庭電化製品(家電)が普及し家事から女性を解放した、と言われている。IT関連商品の普及はどのように生活を変え、どんなニーズを生み出していくのだろうか。卑近な変化で言うなら、電波ではなくて回線で映像番組や音楽を楽しむようになり、電話は距離や利用時間に関わりなく回線利用料に含まれ無料になり、CFを見せられる時間がなくなる、ということだろう。社会的観点からは「時間や場所の制約にとらわれず会社、学校や地域コミュニティ等の多様なネットワークにアクセスできるようになる」というものである。血縁、地縁、社縁などの排他的な条件のうえで成立しているコミュニティに代わって開かれた参加退出自由なコミュニティが形成されることである。
利用者観点からは、IT化、ブロードバンド化による生活の変化とは、利用者がPDAやテレビ等の情報家電を手にすることによって、様々な情報を利用しながら生活時間を組み換え、生活を充実させることができるようになることである。電化製品は、家事の苦労を軽減し自由な時間を作り出した。IT関連製品は時間を充実させることに作用するのである。家電は時間を作り、情報家電は時間を充実させるということができる。もっともわかりやすい例は移動時間である。会社に行く、学校に行く、買い物には場所の移動が必要になる。生活時間調査(NHK)によれば平均約60分の時間を費やしている。この移動時間に、なんらかの手段によって、向かう場所での用事の準備をしたり、メールで連絡をしたり、音楽を聴くことができれば貴重な時間を充実させることができる。さらに、移動時間だけではなく、他の生活時間でも時間を組み換えたり(タイムシフト)、携帯やメールで済ませたり(スペースシフト)することができる。同じ時間のなかで、音楽を楽しみながら移動するなどのふたつ以上の作業も可能になり(多重化)、電話代わりのメールによってひとつのことに専念することもできる(高密度化)。
つまり、1日24時間の限られた直線のようなコントロールできない時間を自在に操ることができる。IT革命、ブロードバンド革命の本質は、社会的に所有されていた時間を個人が所有するという意味で生活における「時間革命」をもたらし、生活を充実させることにある。すなわち、「つまらない」時間を減らすことである。