消費社会白書も創刊から今年で10年目となりました。毎年、みなさまのお役に立つような研究をしようと取り組んでおりますが、今年も消費社会白書2013が発刊されましたので、内容のポイントをご報告させていただきたいと思います。
本日、私がお話させていただくのは四つです。
まずひとつ目は「消費は後退局面へ」ということです。消費研究を20年以上もやっておりますと、色々なことが見えてまいります。今年は1月頃の景気見通しが非常によく、その後、上期はもつだろうけど、下期はもたないという展望を持っておりました。すると、予想通りに下期から後退局面がはっきりしてきて、様々な統計資料でも明らかになってきました。
消費が後退しているというのはチャンスです。それは、後退=市場の変わり目だからです。このような時に強い会社というのは、例えばかつてのパナソニックやシャープなどの会社は、不況のときに伸びています。そういう意味で、後退局面こそお客さまを掴んで深掘りするチャンスだと思っています。
ふたつ目は、「消費水準が低下する」ということです。消費を捉えるときには必ずふたつの捉え方がありまして、どれぐらい支出をするかという消費水準から捉える方法と、支出の中で消費パターンがどうなるかという捉え方です。量的な消費水準と、質的な消費パターン、ふたつを問題にするわけですが、まずは消費水準の方に焦点を当ててみたいと思います。
三つ目は、消費水準を低下させている要因は「中高年の不安」だということです。中高年が老後を不安に思うことから、全体の消費水準が低下していくのだろうと考えています。
四つ目は「消費スタイルの転換」です。消費の質的なパターンは、どうやら、約20年サイクルという大きなタイミングで変わってきているようです。
以上が、私のご案内したいポイントです。
では、この四つのポイントの上で、2013年をどう捉えるか。これは、長期的視点から、目先の2013年をどう捉えるかという観点からご理解いただけばと思います。図表1をご覧ください。この表は、弊社が毎月集計しているもので、消費支出や平均消費性向(収入に占める支出の割合)預貯金をはじめ、各業界が出している統計からまとめております。見方としては、対前年同期比で、青が改善、赤が悪化となっており、この表で、景気の動きや消費の動きをずっと見ています。
上から4段目以下は収入に関わる問題です。有効求人倍率はこの状況の中でも比較的良いですが、給料は少なくなっても、雇用だけは維持しているという状況が続いているのだと思います。ただ、消費に一番大きく影響があるのは、所定外労働時間、つまり残業時間です。自動車の消費なんかには非常に大きな影響を与えます。時系列で見ますと、2011年の9月からは、有効求人倍率も月間所定外労働時間も、マシになってきています。
震災の問題もありますが、ここ1年の消費を大きく牽引してきたのはとにかく自動車です。新車販売台数の対前年同月比を見ると、2011年12月から127.5%、125.1%、120.1%、156.6%、131.7%、176.3%となり、2012年4月には199.5%という数値にまで伸びていました。これは、ご存知のようにエコカー補助金と減税が効いた結果です。2012年9月からマイナスに転じていますが、まだこのときはエコカー補助金の予算は残っていましたので、9月までに完全に需要の先食いをしてしまったことがうかがえます。
なお、家電の売上はずっとマイナスの状態です。さらに、テレビの値段は今、エコポイントがあったときよりも安くなっています。厳しい状況が続いているわけですね。
縦の方を見ていきますと、とにかく2012年2月に青が多く、この時点が、消費者の財布のひもが一番緩んでいた時です。それが少しずつ変わっていきますが、まず食料品がマイナスに変わります。食料品は切られていくわけです。それから財布のひもが締まると、衣料品が切られます。それから外食、住宅と移っていって、自動車も徐々に駄目になっていくという形になります。これが消費者の支出項目を業界統計で見たときの財布の締まり方です。
それを指数化したものが次の図表2です。消費というのは経済ではよく「遅行系列」といわれ、景気の後追いの数字だなどと言われるのですが、我々が見ておりますと、むしろ先行系列の側面も結構あると感じております。また、消費の傾向は約7年サイクルの波を打っているようで、直近のピークは2012年1月辺りです。先ほどのデータでも消費は2月辺りから下降局面に入ってきておりましたので、ここから、現在の景気後退は、循環的な意味での消費局面の変化ということになります。
データにもあるように、景気は後退局面に入っているわけですが、その要因は何かといいますと、平均消費性向の低下です。家計調査における2人以上世帯の平均消費性向をみると、全体では2011年時点で73.4となっております(図表3)。