「あの人が持っているあの商品が、ほしい!」「あの人が持っているものは、私はいらない」。そんな"張り合い消費"が、現在の消費を捉える上で有効になってきている。弊社が毎年行っている「消費社会白書2016」のオリジナル最新調査で、その実態が明らかになった。
これまではインポートブランドのバッグや時計、自動車など、みんなが持っていないものを持つことを、見せびらかし消費やステータス消費といってきた。だが、今の状況を表す張り合い消費は、以前とは違って階層意識と結びついている。
消費増税後、消費は低空飛行が続く。一方で、100万円以上の高級時計に人気が集まり、よく売れている。時計は他者の目につきやすく、男性、女性を問わず、この張り合い消費の象徴となっている。一昔前は、ロレックスなどの高級時計が人気で、一部の富裕層が、中流層に見せびらかすためのステータス価値を持っていた。しかし現在は、フランク・ミュラーやウブロといった200万円、300万円の時計が百貨店などでよく売れているという。
アベノミクスによる金融緩和で、資産格差の拡大、正規雇用と非正規雇用や、大都市と地方による収入格差の拡大といった複合的要素によって、階層意識がより際立つようになった。
日本では1970年代、9割の人が中流意識を持っていた。現在は、「中の中」と答える人が減少し、「中の上」「中の下」と答える人が増えている。所属階層を「上」や「下」と答える人はごく一部で一貫してあまり変わらず、全体ではほとんどの人が「中の上」「中の中」「中の下」のいずれかと答えている。自分の所属する階層の意識が強く、「中の上」の人はひとつ下の「中の中」の人が持っている商品をほしがる。「中の中」の人は、ひとつ下の「中の下」の人が持っているとほしがらす、「中の上」の人が持っているものをほしがる傾向にある。階層間で、張り合いが起こっている。(米国では、ヒップスター現象といわれている。個性的なスタイルを求めるほど、同様のスタイルがグループ間で広がることを指す)。
特に時計で張り合い消費の現象が現れているが、車ではそれほど見られないのも特徴だ。かつて「いつかはクラウン」といったように、ステータスの象徴だった自動車だが、現在は移動手段のひとつにすぎないと思っている人が多い。
一方で、時計のほかに、ビール、食品などの日用品でも張り合い消費はみられる。1,000円以上する高級マヨネーズや、人気で入手困難なドレッシングなどプレミアム商品が売れているというのも、張り合い消費の影響だ。
こういった状況を踏まえ、企業はこれからターゲットとなる消費者の階層意識をセグメント基準にして、市場戦略や拡販戦略を考慮しなければならない。その上で、それぞれに合ったマーケティングアプローチが必要になってきている。