眼のつけどころ
シニア消費の回復期待 -「黒田水鉄砲」のプラス効果

2016.02.17 代表取締役社長 松田久一

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 2月16日、2015年の10~12月期のGDP速報が発表され、前期比0.4%減と2四半期ぶりにマイナスとなった。その主因は、GDPの60%を占める個人消費の低迷にある。同日発表された2015年の実質消費支出は2.3%減となり、2年連続のマイナスとなっている。円安で輸入物価が上昇し、物価上昇で実質賃金が目減りしているからである。

 円安と物価上昇の源泉は、アベノミクスの「三つの矢」のひとつである、金融政策、特に、「異次元」の金融緩和にある。黒田東彦日銀総裁誕生後は、政府発行の国債やREITなどのリスク資産を購入するというところまで踏み込んだ。さらに、2015年12月のアメリカの利上げ直後に、追加の金融緩和策を発表した。このタイミングは見事で、円安に大きく振れるはずであった。ところが、むしろ為替相場の混乱後、円高に振れた。「あれ!?」。そして、ついに2月には「禁じ手」のマイナス金利を導入した。しかし、円高。「あれ!?」。

 本来、経済理論通りなら、円安、輸出企業の収益増加、株価の上昇、投資家の含み益増大、雇用拡大、賃金上昇、消費拡大、設備投資拡大の経路をとることになる。そして、最終的に日銀のターゲットとする2%前後の物価上昇へと繋がるはずであった。

 なぜ、黒田バズーカが黒田「水鉄砲」になったのか。