20年ぶりの変化、つまり、大きな変化(A Great Change)の波がきている。この変化を乗り切るには、消費者が消費し、企業が生産するという市場経済の根本の「価値」から再出発するしかない、というのがこの白書の結論である。
2003年~2023年までの20年間のデータをもとに言えることは、戦後の日本社会の特徴であった「分厚い中流社会」を長く支配してきた価値意識が共通性を失ったことだ。
「あたたかな家庭や社会をつくりたい」(利他性)と「理想や夢を持って生活したい」(未来性)の価値意識が6割を切り、もはや社会の大勢的意識とは言えなくなった。このふたつの価値意識が構成する価値は、儒教的言い方では「徳」である。反対に、利己性-現在性の価値観、つまり、「今・ここの私さえよければいい」という「我利我利」の「我」の価値が台頭している。
そして、この価値意識の変化をもたらしているのは、コロナ禍やウクライナ侵攻や米ソ対立を含む世界の客観的な変化であり、歴史の主役である人々の世代交代などの属性的な主体的な変化である。その主因は、Z世代のような世代交代ではなく、収入格差が生む階層化意識である。世代交代、年代変化(高齢化)、ライフステージ(未婚化少子化)などの変化の小さな変化が急速に広がった階層意識が加わり、「雪崩的」な大変化をもたらしたと解釈している。
もうひとつ注目すべきは、「徳」から「我」への価値変化は、表層的な現象であって、低階層と高齢層の人々の増加によってもたらされたものであって、深部では、「我」から「徳」への価値変化が、社会の上層や20代などの若年層で起こっているということだ。若者が荒れているのではなく、「怒れる」高齢層、「我利我利亡者」がしている面もある。
表層では、「徳」から「我」へ、深部では「我」から「徳」へという順風と逆風が合い乱れているのが現在の価値、つまり、人々が暮らしていく上で大切にしていることや意識、である。
人々の行動が、世代や年代だけでなく、価値の違いによって差が生まれると、これまでの常識が崩れてくる。崩壊していることをレガシーによって気づかない。人々が季節を感じるのは、GMSなどのスーパーの売り場だ。季節感を演出するために、店内行動の導入は、季節感の溢れる野菜や果物の色とりどりのVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)で惹きつける、と思ってきた。
このような季節感の溢れる売り場を期待するのは、「徳」の価値を持つ30%ほどの層だ。彼らは、感情を刺激されて、わくわく感を抱き、関連購買やストアロイヤリティアップに結びつく。しかし、70%を占める中流や下流層は、売り場には効率的な期待を持つので売り場演出は無駄に見え、寧ろ、割高に感じられる。
消費者の価値観の断層は、売り場だけでなく、商品開発、ブランディング、CMに及んでいる。消費者をセグメントしターゲティングし、価値統合しなければ、現代の消費者には対応できない。自社のレガシーマーケティングを見直して出直し的再建をする時期だ。消費者の意志決定の事前から事後へのプロセスを捉えるデータがないことも事実をつかめなくしている。
売手企業の課題は、この異なる価値観をもった人々をどうセグメント(区分)し、ターゲットとするか、そして、売手の価値を象徴するブランドを決定前から決定後まで統合的に関与者を巻き込んでアプローチし、より多くの価値を提供する仕組みを構築するかにかかっている。価値を増やすことが、値上げへの最善策であることは言うまでもない。
今回のワークショップでは、大転換期の価値差別化戦略を解決策として、ユニクロなどの事例分析を通じて提案する。
このような川下の消費者の意志決定からの価値提供プロセスの統合は、競争優位の戦略の枠組みでも、自前DX化でも難しい。弊社では、AIなどのあらゆるオープンプラットフォームやデータサイエンス技術を駆使して構築することを提案する。ワークショップでみなさんに提案できる機会を頂戴できれば望外の幸せである。