21世紀の消費を読む-スーパースペースへの戦略対応

2000.11 代表 松田久一

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消費不況の経済学説

 消費の回復が思わしくない。不況からの脱出には消費の回復が不可欠である。マクロに経済をみた場合、所得の労働分配率が高く、企業の設備投資や政府支出だけでは需要を支えきれないからだ。家計調査で見た消費も上向きというよりは不安定である。なぜ、消費が回復しないのか。企業の営業やマーケティングの現場にとって、自社の売上を考えると他人事では済まされない。  消費の展望については幾つかの議論がある。堺屋経済企画庁長官が唱えていた節約疲れ回復説がある。不況で節約に疲れ、我慢できなくなって消費が回復するという説である。現在ではこんな脳天気な説を唱える人はいない。

 消費不況について主に二つの説がある。

 第一に、消費不況の本質は「先行き不安」であるとする説がある。現在の主流説である。2000年度の「経済白書」は、計量モデルを活用して検証している。消費は、所得によって決定される、しかし、その所得とは実際に懐に入るものではなく、何らかの主観的な割引率によって修正された生涯所得によって決定されている、というモデルである。検証結果を意訳すれば、今はそれなりに所得があっても、会社が実力賃金体系に移行し、将来の給与、年金、医療費や介護費用などを考えるととても使う気にはならない、ということである。

 第二の少数派の説は、一部の民間シンクタンクなどで分析されているように、企業収益が回復し、年末の賞与は増加傾向にあるので、消費はまもなく回復するというものだ。各種の消費者調査でも消費心理が回復しているデータも挙がり始めている。IT関連を中心に消費は回復しているのに「消費銘柄」としての大手組織小売業の業績回復が遅れているだけという見方もある。