ウィンテル帝国崩壊下のネット製造業戦略-ネット経済化の三段階モデル

2000.03 代表 松田久一

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01

ネット経済化の新しいステージ

図表1.進むネット経済化
図表

 ネット経済化が急速に進んでいる。ヤフー株が一億円を超え経済一般の話題としても、経済のネット化、インターネットの関心、利用、普及が進んでいる。郵政省の調査によれば、インターネット利用者は約1,700万人(99年現在)普及率約15%、パソコンの普及率は25%である。新製品やサービスなどの普及はS(成長)曲線を描くことが知られている。普及導入期は低い成長率で、普及率が15%を超えると一挙に成長するという統計的経験則である。この経験則に照らしてみれば、現在が、まさに、導入期から成長期への転換点なのである(図表1)。PC普及率、インターネット利用率、EC端末の普及拡大などがその証左となっている。

 この経験則だけではない。ネット経済化が、日本独自の様相を帯びて、新しいステージに入ろうとしている。その様相を概観し、メーカーや企業の戦略構築のための現局面を提示するのがこの小論の狙いである。

02

ウィンテル帝国の崩壊

 ウィンテル帝国下(マイクロソフトWindowsとインテルの支配)で、パソコン、インターネット、検索サイト(ヤフーなど)を通じて、20世紀のネット経済化が進んできた。現在、それが終わろうとしている。否、終わってすでに新しい局面に入っていると言った方が正確かもしれない。

 パソコン用のOS[*1]としてウィンドウズが圧倒的なシェアをもち、デファクトスタンダードとなった。それは、ウィンドウズが必ずしも優れたOSであった訳ではなく、ビル・ゲイツのパソコン普及への信念から生み出される決断とIBMの戦略的失敗によってスタンダードになったということはよく知られている。そのことによって、MPU[*2]の市場支配力も、インテルに自動的に転がりこみ、特許訴訟で、市場防衛を確立した。こうして確立されたウィンテル帝国は崩壊しつつある。しかも、それが遅れている、遅れていると言われた日本市場において崩壊したのである。

 帝国の防衛線を突破したのは、意外な奇襲攻撃からであった。iモード端末[*3]である。インターネットを利用できる機能は圧倒的な人気を得、一挙に携帯電話市場を制覇した。続いて、携帯各社も追随し、いずれすべての携帯電話でインターネットを利用できるようになることは明らかである。現在の日本最大のプロバイダーは、ニフティではなく、NTTドコモである。

 このiモードの開発は、電車内で、携帯電話を操作して遊んでいる高校生の観察から、企画発想された。アメリカでは考えられない消費者の利用状況が画期的な商品を生み出したのである。

 この成功は意外な事実を露見させた。ユーザーはパソコンが欲しいのではないということである。パソコンは手段であって、ユーザーが望んでいるのはインターネットメールの活用であり、インターネット情報の利用である。もっと言えば占いがしたいのかもしれない。そのためにパソコンが欲しいのである。あまりにも、単純な事が明らかになった。