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消費の復調から後退へ
2012年度上半期の消費は、比較的堅調に推移している。総務省「家計調査報告」によると、2012年3月から6月の消費支出は、名目と実質でともに伸び率はプラスとなっている。以下では、消費の変化を消費者の生活実感に即した形で捉えられる15の指標に着目し、ここ1~2年における消費の動向を整理してみる(図表1)。
2011年度は、「東日本大震災」によって消費は低迷した。震災から約2ヶ月後の5月から11月までは消費支出の対前年同月比伸び率はマイナスが続いた。さらに、平均消費性向も低下し、加えて、預貯金も低下した。これは、節電などインフラの事情によって、いわゆる残業代(「所定外労働時間」)が減少し、手取りの収入が減少し、預貯金も減少し、さらに、それ以上に消費支出が節約された結果である。消費の個別品目では、新車販売台数が70%水準に、旅行業者取扱高も低迷した。外食のためのファミリーレストランやファーストフードも手控えられた。他方で、衣料は節電の暑さ対策として増え、増えた内食機会用の食料品への支出は伸びた。ふだん「節約をこころがけている」と回答している人の比率は、全体で77%にまで至っている。
しかし、2012年に入り、2月から消費支出は5ヶ月連続して前年同月を上回っている。そのなかでも新車販売台数の成長は著しい。旅行業者取扱額も大きく伸びている。ファーストフードやファミリーレストランも回復した。他方で、チェーンストア売上高は、全体でも、食料品や衣料品でも対前年を下回っている。これは、残業代が伸び、収入が伸びたことによって、預貯金も着実に増やしながら、エコカー補助金の恩恵をうける自動車や、旅行などへの支出を増やし、外食機会も増えていることを示している。その結果、内食機会や暑さ対策も一巡し、チェーンストア売上は対前年同月比を割り込んでいる。ふだん「節約をこころがけている」と回答している人の比率も全体で70%の水準まで下がっている。
2012年の消費は、2011年の大震災ショックから回復し、ほぼ2010年水準にもどりつつあるとみてとれる。2010年は、リーマン・ショックからの回復が期待されていた時期であった。
消費が復調している要因は、約10兆円の復興予算の財政出動、エコカー補助金による自動車の特需、大震災後の自粛ムードの下にあった2011年からの反動需要、節約意識の若干の緩みなどがある。そのなかでも、雇用や収入の長期見通しの指標になる有効求人倍率が上昇傾向にあり、雇用が安定していることが2010年水準への回復の背景となっている。しかし下期は、復調から後退へと転換する傾向が顕著にあらわれている。理由は三つあるが、まずひとつ目は、エコカー減税の予算が9月になっても残るほど、クルマ需要の「先食い」が底をついていることだ。そしてふたつ目は「特例公債法案」の不成立によって、政府の支出にブレーキがかかったことが挙げられる。法案成立の目処は立っていない。最後に三つ目として、消費税値上げが予想以上に消費マインドを低下させている、ということである。