価格時代の保守的政策のすすめ

1994.10 代表 松田久一

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 ブランドの破壊とは価値が破壊されるということだ。

 これまでの日本のブランド価値は、豊かさと平等という画一的な価値を、正確無比な品質水準での大量生産技術で提供し、150万の業種小売店、1日20時間のイメージ広告によって伝達することによって、創造し、支えられてきた。業種破壊業はこの仕組みによって確立されたブランドを、ブランド価値を壊さない程度に安売りすることによって成長してきた。CVSはもっとはっきりブランド維持に協力してきた。

 このブランドの価値を伝える仕組みが崩壊しようとしている。規制緩和と価格破壊の波である。

 絶対的な貧乏はなくなった。相対的意識しか持たない豊かさという価値はゆらぎ、平等という価値は「大学を出たから働く権利がある」という理屈まで生み出すほどに爛熟した。豊かさと平等は、もはや、価値としては何の魅力もない。もっとも効率的な国内大量生産技術は、もっとも高い賃金のもとでもっとも非効率なものになった。規制緩和は、150万の業種小売店の経営意欲を潰しにかかり、マスメディアはマルチメディアへと分解している。

 価値を伝える仕組みが壊れはじめている。だから、ブランドが壊れる。価値のない社会、価格だけが支配する社会になっていいはずがない。価値のある社会への貢献こそ、産業資本と呼ばれるメーカーの守るべき保守的立場である。メーカーのブランドと価値を創造し、守る仕事が問われているように思う。アメリカの真似はすべきではない。