眼のつけどころ
潜在成長力が高まる食品市場

2016.07.05 代表取締役社長 松田久一

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01

エンゲル係数の変

 生活者は豊かになると、「衣食足りて礼節を知る」の経験則どおり、収入に占める食費の比率、すなわち、エンゲル係数は低下するといわれてきた。19世紀に発見されたといわれる「エンゲルの法則」である。しかし、日本はこの2~3年、エンゲル係数が25%を越え上昇傾向にある。21世紀に入って、長期でみても若干の上昇トレンドを描いている。つまり、成熟市場の典型であった食品市場の潜在成長力が高まっているのだ。

02

日本は貧しくなったのか

 日本はエンゲル係数が再上昇するほど貧しくなったのだ、と思われがちだが、実はそうではない。長期動向をみると、2011年を底に収入も支出も増えている。しかし、上昇しているのは食費で、クルマや大型薄型テレビなどの選択的耐久財は減少している(図表1)。

図表1 実収入と消費支出の長期時系列推移
図表