21世紀の新しい消費の現実

2015.11.27 代表取締役社長 松田久一

本稿は、「消費社会白書2016」の巻頭言として掲載されたものです。

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 「シングル社会への価値転換と張り合い消費」の時代。

 今年度は、消費と市場の背景をこうとらえた。家族が社会の基礎となり、地域社会が形成され、働き手を生み出し、家族から消費が生まれる、と長い間考えられてきた。誰もが結婚し、家族をつくり、家族だんらんの夕食をとって、一汁三菜に象徴される和食を食べ、郊外の戸建てに住む中流の生活をする。これは、守るべき大事な生活スタイルである。しかし、現実は大きく違っている。

 シングル社会化がますます進んでいる。「ゴーイング・ソロ」(ひとりで気楽に生きていく)というスタイルが先進国では大きな流れとなっている。24時間、個人と個人はネットで繋がっているので「さみしい生活」ではなく、「自由」で「気楽な」生活である。当然、人口は減少し、30万人未満の人口の地方都市は、より大きな地方都市へ、特に東京への人口集中が進んでいる。この影響は、家族を主な顧客にして地方都市に出店してきた総合量販店の撤退として現われている。

 さらに、異次元の金融緩和による資産上昇を相殺したのが、消費税増税である。消費水準は未だに増税前の水準に戻っていない。消費の低空飛行が続いている。消費者はさまざまな要因から「将来、格差が拡大する」と9割近くの人々が思っている。そして、自分の所属階層と他者の階層を意識しながら消費をするようになっている。それが、階層間の「張り合い消費」である。個人消費は、他者の影響を受けないという分析が意味を持たなくなっている。

 これまでのマーケティングは、家族をベースに、消費は他者の影響を受けないという通念で組み立てられ、制度として定着している。しかし、21世紀生まれが15才になり、消費市場に参入しようとしている現在、新しい現実に対応した戦略経営とマーケティングの革新が必要になっている。提案したいソリューションは、「バーティカルマーケティング」による階層対応である。少しでもみなさんの実務のヒントになれば、幸いである。

書籍イメージ

2015.12 発行
版形:A4版カラー
本体9,260円+税

シングル社会への価値転換と張り合い消費

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