ハイレゾ市場が、盛り上がりをみせている。iPodなどの投入で長らくアップルに席巻されていたオーディオ市場で、ようやく日本メーカーにチャンスが巡ってきた。ソニーなど各メーカーはハイレゾ関連商品を次々と発売し、さらなる市場の拡大によって自身の復活を狙う。特にハイレゾに力を入れるソニーは、ハイレゾ対応のヘッドホン、プレーヤー、アンプなどを揃える一方、カーオーディオ分野でもハイレゾ商品を投入すると発表した。今後、マニアだけでなく、一般消費者を巻き込んだブームに拡大していけるかに注目が集まっている。
「ハイレゾ」とは、CDスペックを超えるデジタルオーディオを指す。原音に近い音の再生が可能で、ボーカルの息づかいや演奏者の位置、ライブの臨場感などまで体感できることが売りだ。ただ、再生には、音源ソフト、スピーカー、アンプなどハイレゾに対応した機器を揃える必要がある。
11万9,880円(税抜き)という破格のソニーの携帯音楽プレーヤー「NW-ZX2」、同じくソニーのポータブルアンプ「PHA-3」は9万2,500円、ゼンハイザーのカナル型イヤホン「IE800」10万円前後、マランツのUSB-DAC「HD-DAC1」10万8,000円。従来製品に比べて格段に高いこれらのハイレゾ対応機器が今、人気を集めている。
購入者は、かつてオーディオ御三家といわれた「山水電気」「トリオ」「パイオニア」のブームを支えた団塊の世代のオーディオマニア、クラシック愛好家、アニメファンが中心だという。これまでのデジタルオーディオに満足できなかった愛好者が、ハイレゾ市場に流れている。
それを裏付けるのが、ハイレゾ音源購入サイトの楽曲のラインナップだ。EXILEやテイラー・スイフトなどと一緒に、70年代80年代のアイドル、山口百恵、岡田有希子、松田聖子など、その世代には懐かしい曲や、アニメソング、クラシック音楽が充実している。
ウォークマンやCDの普及で、オーディオ御三家は衰退し、居場所を失った。そして、iPodの登場で、音楽はより手軽に楽しめるようになったが、音楽ソフト市場は1998年をピークに縮小傾向が続いており、オーディオ関連機器市場の売上も1,000億円程度まで落ち込んでいるといわれている。
そこに登場したのが、CDの約6倍程度の情報量を持つといわれているハイレゾ音源だ。イヤホンなどは、大手だけでなく、個性的な製品を作るメーカーの製品も売り場に陳列されており、市場のロングテール化をうかがわせる。今後、ハイレゾ市場がさらに拡大するためには、一般消費者に向けたより手軽な商品の開発や、業界一体となった製品規格の統一も必要となる。また、このブームをきっかけとして、ソニーをはじめとした日本メーカーの復活が期待される。