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消費のねじれ現象
景気循環が底から上昇へと反転したという見方が大勢を占めている。長期低迷していた企業の設備投資がIT(情報技術)分野への投資によって上昇に転じたからである。インターネットによるネット経済化は急速に進展し、不況だとぼやいている暇がないほど忙しくなった人々が増えているのも現実である。政府支出も、赤字国債の発行によって大型予算が組まれ、下支え効果が期待できる。しかし、GDPの約60%を占める消費の動きが鈍い。政府支出、設備投資、個人消費の三つのなかで消費だけが低迷している。
なぜなのか。消費にねじれ現象が生じているからである。インターネットやIT関連の企業が伸びる一方で、建設業、銀行・保険、小売業などはまだまだリストラを継続しなければならない。その結果、伸びる業種と伸びない業種では賃金の成長率格差が著しい。ところが、伸びない業種と伸びる業種では雇用者数が異なる。伸びない業種の雇用者数が圧倒的に多いのである。その比率は約30%と推定される。つまり、IT投資はすべての企業で競争的に投資が行われているのに対して、収入の伸びを支える成長企業の雇用者数は限られるのである。投資の主役業種と消費の多数業種のねじれが消費低迷の数字となって現れている。
ねじれは、IT分野への投資によって生まれた企業業績の格差が個人収入格差に反映され、消費をリードすることによって回復する。その過渡期が現在の状況である。このねじれには、IT革新の投資を誘発する50年サイクルのコンドラチェフ波動とも言える目に見えない生活革命が隠されている。