3月危機-ポストバブル世代の登場で消費トレンドが変わる

2001.04 代表 松田久一

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3月危機

 「3月危機」が現実味を帯びてきている。日経平均株価が3月13日に12,000円を割り込んだ。公共事業頼みの建設業、グローバルな競争力を持たない組織小売業、この両業界に貸し込んでいる銀行業が、自己資産に組み込んだ株価の時価評価に耐えられない。含み損が大きすぎて中間配当に見合う決算ができない。12,000円に耐えられるのは大手都市銀行でわずか一行しかない。銀行業の生き残りは、有り余る日本の資金をグローバルに営業開拓するしかない。しかし、合併で大型化しリストラをせずに規模だけを拡大している。政治的に潰せない規模にする究極の禁じ手をとっている。メーカーが新しい需要を創造し、設備投資を拡大し、景気が回復しようとすると、この三業界が足を引っ張る。この10年間に同じ過ちを再び繰り返そうとしている。それが3月危機である。約64兆円の不良資産とは、建設業、流通業とこの両業界に貸し込んでいる銀行業のことである。雇用者数にして200~300万人である。

 政府に景気回復を望むなら、この構造改革を断行するしかない。構造改革とは合計で約500万人の失業者をだすことである。構造改革を唱え政府の無策を罵るエコノミスト、学者や政治家は失業率を10%にしないと日本経済は回復しないと明言すべきである。しかし、失業率10%に耐えうる政府は存立できない。民主的な選挙によっては作れない。失業率10%は得票率に換算すれば恐らくどの政党支持率よりも高くなるからである。政治は無力を強制され、利害関係者の相互睨みあいで動けないのである。失業者500万、その家族を含めて約1,000万人の投票を敵に回せる政治指導者はいない。

 失業率を高めないで、景気回復する方法は、消費回復しかない。可処分所得の30%がローン返済と貯蓄に回る状況では、減税も、ゼロ金利政策も無効である。人々の蓄財欲が無限に大きい。商品やサービスには欲望の限度がある。しかし、「お金は余っても困らない」と言われるように無制限である。政府ができるのは日銀を通じて通貨供給量の量的拡大を行いインフレーションに持ち込み、貯蓄の利子率を実質マイナスにすることである。つまり、お金を預けると手数料をとるということである。この政策はハイパーインフレーションの危機の引き金を引くことになる。この危険な政策を政府と官僚にまかせるほどの信頼感はない。250兆円の資金量を持つ郵貯の民営化ができる力量もない。

 景気回復の鍵は、政府ではなく消費者である私達が握っているのであり、消費の対象となる商品サービスの魅力、すなわちメーカーと供給者に依存しているのである。

 なぜ、これほどまでに日本は消費小国節約大国になってしまったのだろうか。それが敗戦体験に勝るバブル崩壊体験である。