アメリカと日本の経済動向を超老人の視点から読む
-ドラッカーとガルブレイス

2002.08 代表 松田久一

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01

超老人の視点

 日本人の平均寿命が男女とも世界一となった。おおよそ男が77歳、女が84歳である。 65才以上が高齢層と定義されているが、77歳や84歳から見れば、65歳はまだこれからというところだ。75歳以上を仮に「超老人」と呼べば、21世紀は超老人の時代でもある。経営の世界では知らない人がいない程著名なドラッカー93歳。不確実性の時代を予言したガルブレイス94歳。60代や70代の「鼻垂れ小僧」が業界や会社を牛耳って、組織が活性化しない老害現象も多いが、超老人になればもはや老害を遥かに超えてしまっている。このふたりの超老人パワーは凄い。

 主婦は1週間で生活を考えている。生鮮食品の保存期間が約1週間で食メニューを考えねばならないからだ。サラリーマンや勤め人は1ヶ月サイクルで暮らしている。会社目標の締めと給料のサイクルに依存しているからだ。課長は半年、部長は1年、役員は任期の2~3年で先を 考えている。超老人の視点の凄さは、いま生きるこの瞬間に立脚しながら短期の視点を飛び越えてしまっていることにある。

02

アナリストには事業はわからない

 「私自身証券アナリストだった経験から言うと、財務金融の人間に事業を理解してもらうことは不可能に近い。これは冗談ではない。」と喝破し、「彼らは短期と長期、継続と変化、改善と創造などの相反するもののバランスを手がけたことがない」と続ける。「投資家には経営はわからない」ということだ。これには拍手喝采だ。

 日本の景気の底打ち宣言の後、エンロン等のアメリカ不正経理疑惑からアメリカの株価が低迷し、乱高下し、その余波を受けて、日本の株価も乱高下している。その影響を為替が受け、円高基調の乱高下という格好だ。金融機関は、自社資産のドルポジションを下げるために、円高メリットを強調して預金者にドル預金を勧めている。事業や経営がわかっていないことの典型だ。それにも関わらず、投資家が事業や経営にファイナンスしている現実は変わらない。

 アメリカの情報通信業界は、インターネット革命やフォトニック革命等の情報通信革命を起爆剤に、AT&T等の既存電話会社とワールドコム社やクエスト社等の多数のベンチャー企業が、通信バックボーンへの巨大投資競争を進め、アクセス網のブロードバンド化と企業間のデータ通信需要を拡大してきた。この投資需要に応えてきたのが、ルーセント等の通信機器メーカーやアルカテルやインテル等の半導体メーカーだった。その投資の源泉が資本市場であり、株高だった。過大な供給過剰が激しい価格競争を招き、通信業界の業績悪化を招き、投資需要が減退し、IT業界のバブル崩壊が株価を下落させ、アメリカの消費者の資産を下落させ、消費を抑制することになった。