デフレ不況のなかで高額商品が健闘しているのが注目される。東京都心では、半年で1,320万人の来場者を集めた丸ビル、汐留、六本木ヒルズと続々と新しい商業施設が誕生している。これらの商業施設の特徴は、インポートブランドを基軸にしたショップ、有名シェフ、職人、老舗レストランやホテル、映画館などのエンタメ施設を持っていることだ。この周辺に、新しいマンションが次々と供給されている。これらの施設で提供される商品やサービスは、決して安価ではない。主婦の財布の紐の緩み具合が露骨に表れるデパートの地下売場でのヒット商品でも安価なものはない。一本1,200円の巻きずし、一丁400円の豆腐や一個500円の肉まんが飛ぶように売れている。極めつけは分譲マンションである。都心三区で売り出されるマンションの価格帯は「億ション」が中心になり、10億円を超えるマンションが即日完売となっている。インポートブランドの勢いも衰えていない。マンションの賃貸価格は低下傾向にあるとは言え、都心の最新設備を備えた物件は、ワンルームマンションでも15万円以上が平均賃貸料となっている。六本木ヒルズのレジデンス棟はその中心が約100万円台である。
デフレ不況のなかですべての値段が下方にシフトしている訳ではない。ファーストフード、パソコンや家電といった量産効果のある商品は、国産品は半年で半値になり、翌年に中国からの輸入品になるという世代交代を繰り広げている。しかし、他の多くの商品サービスでは「安全」、「安心」、「高品質」を求めて価格帯が上にも拡大し、下へも広がっている。購入価格帯の垂直的拡大が現在の消費の現場で生じていることである。ここでは、なぜ、購入価格帯が上と下へと拡大したのかを分析し、解決策としての価格差別化戦略にふれてみたい。