ステルス戦闘機という敵の防衛レーダー網をかいくぐることができる爆撃機がある。「いつ日本が経済成長を果たすようになるのかを予測することを、他の多くの西洋諸国と同様に諦めていた」と感慨する「ビジネスウィーク誌」は日本の景気回復を「ステルス経済回復」と揶揄している(2004年6月14日号)。彼らによれば、日本の景気回復は進んでいるが、経済構造改革はまったく進んでいないと分析している。デジタル家電や中国への輸出が指摘されているが、本音では「よかった」と喜びながら、なぜ、改革が進んでいない日本が経済成長を達成しているのか、不思議でならないと言うことだろう。「ステルス」という言葉にそんなニュアンスが込められているように感じる。
日本経済の再成長要因として、消費と企業の設備投資の回復が海外にも説明できねばならない。なぜ消費が回復しているのか。収入や資産要因ではないグローバルな外部性要因を整理してみた(「クール・ジャパンが消費回復を牽引する」)。成長エンジンのもうひとつは企業の設備投資である。企業がなぜ収益回復を果たしているのか。企業戦略の転換という観点から問題の仮説的な答えを提出してみる。日本の基幹産業である製造業が経営スタイルの転換を行い「新しい日本的経営」に移行した、というのが帰結である。もちろん、金融業界、特に銀行業界は不良債権比率の低下が見られるものの未だにその収益源の多様化は進まず、公共事業に依存してきた建設業界とともに除外することを前提とした分析である。