郊外が生む新しい生活スタイル

1994.07 代表 松田久一

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景気の分水嶺

 今年度の上半期が、景気の分水嶺になることは間違いがない。そして、その牽引車になるのは、個人消費であることも言うまでもない。企業の設備投資は冷えきったままである。理由は、89~91年のいわゆるバブル期にとんでもない設備投資をしているからである。3年間の投資は、フランスのGNPの3倍になる。企業の固定費が増え損益分岐点が上がっているのである。政府支出は、緊急公共投資35億円と目一杯のところまできている。

 回復の鍵を握っているのは個人消費である。ところが、給料は上がらない。失業率は2%だが、新卒の「無職率」は10%以上、女性の新卒になると40%以上になると予想されている。潜在失業者は、500万人と言われているのだから賃金上昇率も時間外手当も減っている。期待できるのは、減税効果だけだ。

 不況回復は、物価を下げて、個人消費の購買力を拡大し、需要を拡大させるというシナリオしかない。  その鍵を握っているのが、バブル後の生活スタイルである。消費の量は購買力によって決定されるが、その質は生活スタイルが決定する。どんな価値観をもって、どんな生活をし、どう暮らすか、である。

 消費は、これからの新しい生活スタイルが見え始めた時に動きだす。生活変化がもっとも顕著に現われてくるところが需要の震源地である。

 震源地のひとつが「郊外」である。  郊外で新しい生活スタイルが生まれようとしている。バブルが崩壊して、鍋、味噌、醤油が売れはじめた。残業が減って早く帰宅する主人を囲んでの鍋料理が流行ったからである。「1年間で、どうやって百万円を貯めるか」、「月末ピンチをどう乗り切るか」というテーマが近年の雑誌のヒットテーマである。土日は、「RV」(レジャービークル)で家族揃ってキャンプという現象も見られた。これらを称して、「土鍋消費」という。

 土鍋消費に代わる新しい消費、新しい生活スタイルを生み出そうとしているのが、「郊外」である。

 東京なら、国道16号線沿いの30~50Kmの圏内である。大型店の出店地域もここに集中している。好調なマンション販売の激戦区「浦和」もこの圏内にある。都心まで電車で30分というエリアである。