自動車、薄型テレビなどが販売不振である。2008年からの景気後退が背景にあることは言うまでもない。他方で、売れているものもある。不況下で何が売れるのか。衣料、家具インテリア、インポートブランド、情報家電などのマスコミで取り上げられた話題の品目を挙げて調べてみた。不況下での財布のひもの開き具合を見てみる。
マスコミで話題になった18の品目についての購入経験と購入意向、そして、近い将来に発売が予想される10品目についての購入意向を調べた(2009年1月度JMR消費動向調査)。
これらの商品をひとつでも購入した人は約67%だった。10%以上の購入率があったのは6品目だった。上位品目は、「ユニクロの衣類」が断トツの49%、続いて「しまむらの衣類」(16%)、そして「ニンテンドーDS」(13%)、「ニンテンドーWii」(11%)と任天堂のゲーム機が続き、六番目に、「ニトリの家具・インテリア」(10%)である。当然ながら、業績好調の企業の商品サービスが並ぶ。
今後、購入したいものでは「ひとつもない」が55%にのぼった。およそ5%以上の購入意向のある商品は6品目だった(図表)。「ユニクロの衣類」(27%)、「ハイブリッドカーの新型車」(12%)、「有機ELテレビ」(9%)、「しまむらの衣料」(9%)、「その他のブランド衣類」(8%)、「ニトリの家具・インテリア」(5%)の順だった。ゲーム機はランク外だった。
不況下で購入したものと購入意欲のある商品のリストから幾つかのことが言える。ひとつは、およそ70%の購入率に対して購入意向率は45%と低く、このリストからは消費の低迷が予想されることである。ふたつ目は、上位品目を占めたのは成熟商品の典型である衣料である。衣料品が上位三品目を占め、購入率がトップの商品は、防寒機能のある「ヒートテック」素材の男性下着がヒットしたユニクロの衣料である。「しまむらの衣類」や「その他のブランドの衣類」も続く。不況に弱いはずの衣料でも、ただ安いだけではなく、新しい機能が付加されれば売れることを証明した。三つ目に、販売の苦戦が続く自動車、テレビも欲しいものに入っている。しかし、従来のガソリン車や薄型テレビではなく、今後の市場導入が予想される「ハイブリッドカーの新型車」、「有機ELテレビ」や「ハイパワー電動アシスト自転車」である。より地球環境に配慮されたより高機能な新商品なら欲しい商品になれるようだ。
不況下で売れた商品と欲しい商品のリストが示唆しているのは、ありきたりの成熟商品の値引きが期待されているのではなく、新しい機能が付加されたり、特定層にとって使い勝手があったりする、お得感のある、比較優位商品である、ということだ。そして、自動車や家電などの耐久消費財には、根本的な産業イノベーションを伴う製品イノベーションが望まれていると言っても過言ではない。
[2009.04 日立SQUARE]