信頼づくりのネクストマーケティング

2008.03 代表 松田久一

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 売り手と買い手の信頼関係なくしてどんなマーケティングも成り立たない。

 「マーケティング」の概念が19世紀末のアメリカの中西部で誕生し約100年が経過する。この時期にアメリカにおいて身内を超えて信頼できる社会が生まれたからである。それから第二次世界大戦を経て50年後の1950-60年代に、アメリカでは、大量生産と大量販売が結びつき、ラジオ、テレビなどのマスメディアの発達とともに、現代の「マス・マーケティング」のスキルがほぼ確立された。その同時期に日本にマーケティングの概念とスキルが導入された。それから50年が経過した。2008年、クライアントのみなさんにご提案したいのは「信頼づくりのマーケティング」である。

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地に落ちた売り手への信頼

図表1.2007年以降の偽装、不祥事報道
図表

 2007年は、様々な事件が起きた。特に、注目すべきは、テレビ局による「納豆ダイエット事件」、繰り返される公共放送の不祥事、相次ぐ大手メーカー、外食産業や老舗企業の「食品偽装事件」、2008年に入って「中国ギョーザ事件」と続いた(図表1)。こうした一連の事件は、単に、個別企業の不祥事や食品関連業界の問題として捉えられない。構造的な問題と捉えるならば、買い手である消費者と売り手であるメーカーの信頼の絆が崩れたとみることができる。

 なぜなら、消費者にとってみれば、メーカーのメッセージに信憑性はなく、情報チャネルであるメディア企業もウソをつき、身近な小売や飲食店などの売り手も信頼できないからだ。つまり、すべての売り手、その関与者とシステムの信頼性が低下している。現代の日本のマーケティングの本質的な課題は、買い手である消費者と売り手であるメーカーとの信頼関係を再構築する、信頼づくりである。しかし、その答えは、「ウソをつかない」、「社員の行動規範を明確にする」、「社会的責任を明示する」、「検査やチェックの仕組みを厳重にする」というような対処療法的なものだけでは済まない。もっと問題は根深く、歴史的で、構造的なものだと思えるからだ。

 ここでは、売り手はどのように消費者との信頼関係を形成してきたのか、信頼関係が崩壊した歴史社会的な背景は何か、現代の信頼関係づくりの鍵はなにか、信頼づくりのマーケティングをどう進めるかというように議論を進めたい。

[2008.03 営業力開発]