家電量販店の激突と消費者

2008.01 代表 松田久一

本コンテンツは、「東京新聞サンデー版2007年12月9日」掲載記事のオリジナル原稿です。

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 家電量販店が全国で激しい競争を繰り広げ、提携・合併などによって業界の寡占化が進んでいる。少子高齢化で人口が減少し、多くの製品が成熟期の買い替え需要となり、家電市場のパイが縮小していることが背景にある。特に、2007年は地方経済が疲弊し、人口が増えている東京市場で、業界トップのヤマダ電機が参入し、より競争が激化した。

 こうした動きは消費者にとっては欲しい製品が安く買えると歓迎されている。値段が大幅に下がってきた大型薄型テレビ、「おどり炊き」のできる炊飯器、ハウスダストを検知する掃除機など気になる身近な製品が少しでも安く買えれば家計が助かる。

 しかし、喜んでばかりはいられない。量販店間の値引き競争が、日本の家電産業の競争力を低下させる面も持っているからだ。大型家電量販店が他店よりも安く製品を販売するには、費用節減努力などによって低コスト販売を実現することに加え、より大量に製品を仕入れてメーカーから有利な値引き条件を引き出すことが重要だ。しかしこのような大量仕入れによる家電量販店の値引き交渉力があまりに強くなると、メーカー利益が少なくなり、新製品を開発したり、品質を改善したり、新しい技術への投資をしたりする余裕がなくなってしまう。その結果、低価格だけの競争になり、技術的には差がない韓国や中国のメーカーにシェアを奪われ、国内メーカーが窮地に立たされることになる。現に、情報家電製品で世界シェアトップにあるのはデジカメやDVDレコーダーなど数えるほどしかない。つまりは国内での雇用減少へと繋がることになる。特に、製造工場を多く抱える地域経済にとっては深刻である。

 自由な競争によってよりいい物がより安く買え、地方の雇用喪失に繋がらないようにするためには、日本の消費者がもっと賢くなる必要がある。つまり、値段だけでなく、品質もしっかりチェックして、製品を選ぶとともに、購入先の選択でもただ安いことだけでなく、商品知識やサービスも評価することである。

[2008.01]