日本経済の戦後成長を支え現在の基幹製造産業である家電・電機・通信などのIT産業が危機的状況にある。約500兆円の国内総生産(GDP)のうち約30%のおよそ150兆円を製造業が占める。「大問題」と言われる不良債権問題を抱える金融業界が約25兆円の付加価値だからいかに影響力の大きい産業であるかがわかる。なかでも花形は約24兆円を占めるいわゆるIT産業である。これに融合が進む通信サービス分野を含めると約49兆円になる。GDP比で約10%である。また、これらの産業は、日立製作所、東芝や松下電器産業に見られるように80年代の日本的経営のシンボル的存在でもあった。
2001年、日本のIT産業は、アメリカのIT不況に直撃され大きく収益をダウンさせ、日本的雇用慣行であった終身雇用を見直し、「選択と集中」のリストラ策を発表した。日本の多くの人々にとってまさに「電気ショック」であり、日本産業の本丸落城を印象づけた。2002年、もうひとつの本丸である自動車産業でもトヨタが中国進出に関して第一汽車との包括的提携を発表した。「ものづくり大国日本」が崩壊し、雇用が失われるという危機意識が蔓延している。さらに、インターネット革命がブロードバンド革命へとステップアップし、新たな機会と脅威を生む新しい市場環境にも迫られている。
IT業界はどのような危機的状況にあるだろうか、どうすれば再生とリバイバル(復活)ができるのだろうか、リバイバル戦略の決め手は何であろうか。これらの課題を明らかにするために、関連8業界の分析と主要17企業の分析を行い報告書としてまとめた。この論文はこの報告書を基に結論を集約したものである。
[2002.09 MNEXT]