2.RBVのエッセンスとフレームワーク
(1)
自社の強みから戦略を考える
RBVのポイントは、自社の強みからスタートしていくということです。松下電器、あるいは家電メーカーがどうやって勝っていけるかということを考えていこうとします。そのときに、ポーター的なアプローチは先ほど言ったように、まずこれからのマーケットはどうなるのかというブロックを一生懸命考えます。そしてこれからの競争はどうなるのかを一生懸命考える。その上で自社の強みと弱みを考える。そのときに外と内との発想の中から出てくる重点の置き方の考え方が戦略ということになるわけです。機会を活かして強みを活かすということもあるし、機会を活かして脅威を回避する、それから弱みを克服して強みを活かすというのもあるし、弱みを克服して脅威を減らすという考え方も採れます。一番リスクの少ない戦略は、弱みを克服して脅威を減らす、全然チャンスを追いかけていかないけれども脅威を最小化するというものです。
家電メーカーの復活を考えていこうとすると、まずポーター的なアプローチだと市場が重要になります。これからどんな市場・製品が伸びるのか、これからどんな市場に変わっていくのか、その上で自社の経営資源というのを経営目標、具体的には売上とか経常利益率とか、そういうことを達成していくためにはどうしたらいいのかと考えていく。日本の家電メーカーがもしそれを真っ当にやったら、製造は全部中国に持っていきます。なぜかというと、やはり日本と中国の給料の差があまりにも大きいからです。それを実際にやっているのがGEです。GEは研究も全て中国に集中しています。だから外的市場環境というものをベースに考えていったときにはポーター的な戦略論を採るとすると、家電メーカーは今とは全然違うことをやっていたはずです。
ところが実際に松下が行ったのは、自社の強みを活かしていくということをベースに考えています。具体的に何かというと、ものへのこだわりです。また、ものへのこだわりから生まれてくるチームワークだと言えます。聖徳太子の時代から日本の強みは決まっています。それは「和ヲ以テ貴シト為ス」です。なんでやねん!と思いますが、やはりチームワークは真似できないわけです。また技術的にいうならば、高密度実装技術という色々な複合的な部品とかを薄くしたり小さくしたり高密度化する技術ですが、これはなかなかアメリカ人とか中国人とか韓国人には真似できないわけです。だからそういう高密度実装技術、ものへのこだわりを持っている従業員、そういうものを強みとして活かしていく、同時に研究開発で一歩リードしている。特に映像技術です。それで出てきたものがひとつはDVDプレーヤーであり、プラズマテレビであるわけです。そこに全資源を集中していく。集中していくといわゆる市場で競争力を持つ、安くて良いものができるわけです。そんなふうにして松下は復活しているといえます。同じことをキヤノンがやっています。強みを活かした競争をやろうとしているといえます。そういう意味で日本メーカーの戦略は、ここ最近急速にRBVになっているのではないかというのが私の見方です。
[2004.12 MNEXT]