3.ダイナミズムを生むイノベーション優位
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競争優位を自律的にイノベーションさせるとは
100年目のマーケティングというのをどう考えるか。結局、要素市場、内部資源、要素市場を取り込んで価値を創造して対象市場との関係を構築するのが、マーケティングの現代戦略発想の鍵となります。つまり外部を内部化して内部を外部化する過程、これがマーケティングで、真似のできない競争優位、相互依存関係というようなものになります。ブランドとリソースという考え方をすれば、差別的な価値を独占供給・資源制約する、それがブランドなのかもしれません。需要をコントロールできるのはブランドしかありません。
例えばカルビーのスナック菓子でポテトチップスはトップシェアを取っています。その強みを考えていくと、誰でもいいからオーバーオールのノンセグメントで、大手組織小売業という外部と、それから内部資源としてのじゃがいも農地の全国配置、それでシーズン限定素材や独自船を使ったような独自の物流システムを構築しています(図表1)。それを結びつけるのが内部資源である農地の全国配置。つまり「じゃがいも前線」が違うわけです。それを利用してシーズン開発(=季節限定商品)します。それから会社名ブランド、マスキャンペーンを通じた認知、それから鮮度管理型の営業です。つまり内部資源と外とを、マーケティングの四つの仕組みによって作り上げているということです。静的な競争優位とは何かと言うと、「シーズン限定素材で、高鮮度が維持されていて、ポテトチップスがうまい」ということになります。しかしこの仕組みがダメなわけです。この仕組みがなぜダメかと言うと、前に述べたように短期と長期の矛盾があるからです。カルビーの静的な競争優位は完璧です。「これはもう真似できない」というほど完璧です。しかしこの競争優位は「ポテトチップスを食べる」というジャンクフードブームの前提条件の上で初めて成り立つわけです。今問題なのは、この競争優位を自律的にイノベーションさせていくためにはどうしたらいいかということです。それがイノベーション優位ということです。そうすると結局、内部資源を使った能力拡張するRBVの形でイノベーションしていくかどうかということです。そういう観点とそれからもうひとつは、三つのイノベーションの仕組みをどう組み込んだらカルビーが動的なダイナミックな競争優位を持ち込めるかということです。
[2005.02 MNEXT]