2.ポーター戦略論のエッセンスとフレームワーク
(1)
ポーター戦略論を理解する五つのエッセンス
ポーターの考え方が表明されているのは主に三つです。ひとつは1982年の「競争の戦略」(ダイヤモンド社)、それから1985年の「競争優位の戦略」(ダイヤモンド社)です。このふたつが中核にあり、その後1992年に「国の競争優位」(ダイヤモンド社)が出されて、主要著作としてはこの三つだけになります。その500から600ページになる日本語での原文を超簡単に要約すると、五つのエッセンスに集約できます。
ひとつは、企業の持続的な収益は業界の魅力度と業界内の競争地位によって決定されるということ、これが一番目のエッセンスです。二番目は、業界魅力度は五つの力によって規定されるというものです。三番目は、競争地位は競争の幅と競争優位の選択によって決定されるということです。四番目は、競争地位は基本戦略の選択である、ということです。五番目は、競争地位は個別の価値活動の組合せによって実現されるというものです。五つのエッセンスから導かれる帰結は、持続的収益性は業界の魅力度を上げ、他社にはできない価値活動を行うことによって達成される、ということになります(図表1)。
これから戦略を勉強してスキルを身につけようと考えている人は、この五つのエッセンスを命題としてよく理解しておいてほしいと思います。ポーター戦略論は、この五つで基本的には集約されると思いますが、その背景にはあらゆる事例と業界の研究が積み重ねられているのです。「ポーター戦略論は古くなった」と言われればその事例が古いわけですが、今でもこの五つの命題によって基本的には集約されると思います。
[2004.11 MNEXT]