そこで本日は、我々の消費者調査と、各種統計データの分析結果を踏まえて、「今の消費をどう読むのか」、「なぜ『Wミドル』という層に注目すべきなのか」、そして「Wミドルの消費の特徴について」と、大きく三つの構成にわけてお話をさせていただきます。
消費者調査データは弊社のオリジナル調査ですが、2013年1月と3月に、それぞれ実施いたしました。両方ともに、20歳から69歳の男女個人、約1,000サンプルを対象に行っております。
図表1は、消費支出の他に、有効求人倍率や、百貨店の売上、チェーンストアの売上、旅行、新車販売台数、住宅着工数など消費に関連するさまざまな指標が含まれています。
これらの指標は、消費を捉えるための指標として、弊社が1990年代から継続して一覧表に整理しているものです。青い部分が対前年同期比でプラスのもので、消費に対して良い影響を与えているもの、赤い部分が対前年同期比で悪化しているものを示しています。消費支出については、総務省の家計調査より、勤労者世帯ベースで集計したものですが、青くなっていれば、対前年で100%を超えていて、消費が良くなっているという見方ができます。この消費支出データは、2012年2月から直近の2013年4月まで、15ヶ月連続でプラスになっています。実は、バブル期の1990年まで遡っても10ヶ月以上連続してプラスだった時期はなく、15ヶ月も連続でプラスなのは1990年以降今回が初めてのことです。ひとつ明確に言えることは、過去20年間のうち、現在の消費が一番プラスになっている時期だということです。
ただ、2012年の消費については、2011年3月の震災という、少し特殊な要因が絡んでいます。というのも、2012年前半については、震災で消費が抑えられた反動として、少し良くなっていると解釈できるからです。
それでは、いつから震災の影響を受けずに消費が伸びていると言えるのかというと、数字として明確に上がってきたのは2012年11月です。衆議院が解散し、12月に選挙が行われ政権交代が起こるというこの時から、消費は本格的に対前年の伸びを示していると言えます。
図表2.株価と家計並びに年金基金の金融資産残高の推移 |
このように申しますと、「そうは言っても株を持っている家庭は、限られた富裕層であって、一般的な家庭には資産効果は広がらないだろう」と思われるかと思います。しかし、実際に株を持っている世帯数を調べますと、実は、世間一般層のうち31%が、国内株や、ご自身や家族が勤めている会社の社員持ち株を持っています。したがって、約3割の人は、日本国内での株高の恩恵を、なにかしら感じているだろうと推測できるのです。
勤労者に支払われている年間賃金、つまり現金給与の総額は、約206兆円だそうです。206兆円に対して、資産が80兆円増えるのですから、年間給与の3分の1以上にあたる金融資産残高が増えるイメージになります。もちろん、資産というのはストックですので、実際に現金が増えるわけではありません。ただ、株を所有している3割の方は、下がるばかりだった株価がこれからはプラスになるかもしれないという感覚を、感じ始めているのではないでしょうか。株価は、乱高下しているものの2012年6月に8,300円を割った時から比べると、現在は12,000円台と、約1.5倍に膨らんでいます。資産効果は、消費に大きな影響を与えただろうと推測できます。
図表3.現金給与額の前年同月比伸び率の推移 |
現金給与総額(収入)の時系列変化をみると、支出が2012年度にプラスを保ってきていたのに比べ、マイナスが続くこともありました。(図表3)。しかし、厚生労働省の「毎月勤労統計」の速報値によると、対前年を割っていた収入は、4月になってようやく100%を少し上回りました。支出にやっと収入が追いついてきたということです。
基本的に、支出というのは、収入の増減によって変わると考えられています。ただ、現在の日本では、生きていくために必要な支出である「必需支出」に対して、それ以外の「選択的支出」の割合が、ほぼ半分を占めているため、収入の増減によって直接的に影響を受ける消費の比率は、そこまで大きくありません。むしろ、消費支出は、消費者のマインドによって動く部分の方が大きいと思われます。この数ヶ月、収入が伸びていないのに消費支出は伸びていたわけですが、それには、やはり、マインド先行という背景があったわけです。
収入増加が伴わないマインド先行の消費拡大は、いつ腰折れしてもおかしくないと言われていましたが、4月から収入上向きの芽が見えてきていることは、消費拡大を支える要因になります。また、企業が賃金を上げるという動きもありますので、この収入効果が持続すれば、さらに、消費は安泰だと言えます。
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