独自調査結果をもとに、生活者視点から「売れない」時代の「売れる」キャンペーンの条件を分析した。ここでは分析結果のエッセンスを紹介する。
詳細は「不況下の売れるキャンペーン」レポートをご参照ください。
図表1.半年内キャンペーンへの参加率
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性別では男性51%、女性62%とやはり女性の方が参加率は高い。性別ライフステージ別にみると、女性子育て主婦層70%と、もっとも参加率が高く、キャンペーンに参加するのは当たり前、むしろ参加していないのは少数派である。
こうしたキャンペーン参加率の高さの背景にはネットが日常生活に浸透したことがある。キャンペーンの認知経路は店頭が中心だが、メーカーのホームページやメールなどのネット情報も認知経路として大きなウエイトを持っていた。ネットを通じて手軽にキャンペーン情報と接触が可能となり、キャンペーンへの参加を促進していると考えられる。
ひとつは、キャンペーンは、参加に至らずとも、キャンペーンを行っているという情報に接触することを通じて当該ブランドの好意度を高める効果がある。当該ブランドの好意度を高める効果はTVCMとの接触よりもキャンペーン情報との接触の方が影響度が大きく、当該ブランドの好意度形成に有効であることが確認できた。
ふたつは、キャンペーン参加により、当該ブランドの購入頻度や購入量を増やす効果である。商品によって差がみられるが、全体の約3割が購入頻度が増えていた。
三つは、キャンペーン参加によって当該ブランドの好意度を増加させる効果である。ただし、キャンペーンは想定ターゲットにおける当該ブランドの好意へプラスの影響を与えるだけでなく、逆に、参加することで当該ブランドへの好意度が減少する側面もあることがわかった。キャンペーンは当該ブランドへの好意度を形成するのに有効だが、やり方次第ではかえってマイナスの効果をもたらす点には注意が必要である。
今回は、提示した24のプレゼントキャンペーンについて、キャンペーン情報の認知の有無、参加の有無による当該ブランドへの好意度の変化をもとに、成功事例と失敗事例に分類を行った。その結果、成功9事例、失敗8事例が抽出された。これらの成功と失敗を分けた要因は何か、事例ごとにキャンペーンの構成要素を八つの観点から整理し、定性的比較分析(Qualitative Comparative Analysis:QCA)の技法を用いて要因分析を行った。定性的比較分析(QCA)とは、説明変数と従属変数の値の組合せをブール代数を用いて整理し、因果関係を推論する技法である。
今回の調査対象ケースにおいて、八つの条件のうち、次の五つの条件を同時に満たすと、プレゼントキャンペーンの成功確率が高くなることがわかった。
条件1. キャンペーン応募条件に購入の必要があること(タダは効果なし)
条件2. 当選人数が多いこと(1万人以上)
条件3. 景品が複数種類あること(3種類以上)
条件4. 対象商品の用途と合致したキャンペーンテーマ設定
条件5. 顧客シナジーのある異業種とのコラボレーション
具体的に五つの条件を同時に満たしているものとしては、サントリーが展開した「帰ってきた福T 今度はすごいぞ1,200種類の笑点Tシャツ」プレゼントキャンペーンが典型である。応募には、対象商品についているシール4点を1口として集める必要がある。当選人数は3万4,000人、景品の種類は、デザイン、形状、色、サイズが選べ全部で1,200種類と群を抜いて多い。「笑点」といえば日曜日の夕方の伝統的番組であり、日曜日の夕方、自宅でビールを飲みながら家族団らんという「ジョッキ生」などが訴求する飲用シーンとテーマがうまくリンクする。また、「サントリー」ビールの飲用層だけでなく、「笑点」のファン層の両方に興味を喚起し働きかけることが可能でうまく顧客シナジーを引き出すことができているケースである。
プレゼントキャンペーンを検討する上で、「当該ブランド購入者を対象」に、「当選人数は1万人以上」、「景品の種類は3種類以上」、「当該製品の用途をふまえたテーマ設定」、「顧客シナジー」を引き出すコラボレーションが成功の条件である。
独自調査結果の詳細は、「不況下の売れるキャンペーン」レポートをぜひご参照ください。
レポート構成、調査設計、提示キャンペーンはこちらのとおりです。
また、弊社では、「売れない」時代の「売れる」キャンペーンのヒントがわかるキャンペーンデータベースサービスを近日開始します。どうぞご期待ください。