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公開日:2020年09月04日

8月の消費支出予測はマイナス50%の大幅減
JMRモデルで推計(続報)
社会経済研究チーム 松田久一、菅野守


本コンテンツは8月初旬に公開した「7月消費支出への減少効果は約24% JMRモデルで推計(速報)」の続報である。新たに公表された6月の消費支出データを追加し、再推計を行っている。

 新たに公表されたデータをもとに推計を行ったことで、コロナ報道が個人消費に与える影響が、より鮮明に見えてきた。日々の新規陽性確認者数の報道は、年率に換算すると個人消費に24.8%ものマイナスインパクトを与えている。一方で、陽性確認者数は下降トレンドにあり、このまま減少すれば、個人消費はやや回復していくとの見方もできる。

 再推計の結果を図表1に示す。詳しい推計方法は前回コンテンツを参照してもらいたい。


図表1.消費支出に対するコロナ新規陽性確認者数の影響



1.4~6月のコロナ報道のインパクトは-3兆円

 推計したモデルをベースに、新規陽性確認者数の日々の報道が、個人消費に与えるインパクトの試算を試みた。

 消費支出の日々データおよび2019年1月1日現在の日本の世帯数を基に、個人消費支出を試算した結果、2020年1~3月では48.5兆円、4~6月では45.2兆円である(世帯数は総務省公表の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(平成31年、1月1日現在)」より、日本人住民・複数国籍の世帯数を使用している)。これに対し、新規陽性感染者数の係数推定値を基に、新規陽性感染者数がゼロだった場合の個人消費支出を試算すると、1~3月では48.8兆円、4~6月では48.2兆円となる。

 4~6月の新規陽性確認者数の日々の報道のインパクトは-3.0兆円、変化率では-6.2%にもなり、年率換算では-24.8%である。内閣府公表の4~6月期の民間最終消費支出の季節調整済み前期比は実質-8.2%であることから、妥当性のある数値と言える。


2.8月の消費支出予測値は対前年同月比で半減

 推計したモデルをベースに、以下では、2020年7月以降の新規陽性確認者数の推移に伴う、消費支出の日別支出の金額の予測を試みた。

 分析の手順は前回同様以下のとおり。

 2020年7月以降の消費支出の日別支出の金額の予測を行うためには、2020年7月以降の月次ダミーの数値が必要となるが、現状では、当該ダミーの推計に可能なデータは、家計調査において公表されていない。

 そこで、次善の策として、昨年の同時期のデータ、すなわち2019年2月~2019年10月までの消費支出の日別支出の金額を従属変数に、同期間における前日の新規陽性確認者数は事実上ゼロとみなしたうえで、曜日ダミーと月次ダミーを独立変数としたモデルを別途推計した。

 その結果得られた2019年7月の月次ダミー、8月の月次ダミーの数値それぞれを、2020年7月の月次ダミー、8月の月次ダミーの数値に当てはめて、予測に用いることとした(これらの変数の係数推定値は正で、有意水準0.1%であることは確認されている)。

 結果は図表3のとおりである。


図表2.2020年7月以降の消費支出予測


 2020年6月1日から8月24日にかけての、二人以上の世帯における1世帯当たりの消費支出の日別支出の予測金額と、新型コロナウイルスに関するPCR検査の日別の全国の新規陽性確認者数の関連を示している。

 両者の動きを比較すると、新規陽性確認者数は、7月1日から急上昇し、8月7日に新規陽性確認者数が全国で1,574人を記録したのをピークに、その後は低下傾向にある。

 他方、消費支出の日別支出の予測金額は、7月1日から低下を続け、8月10日を底に、その後は上昇傾向にある。

 両者の相関をみると、消費支出の日別支出の金額と新規陽性確認者数との相関係数は、同日同士では-0.879、前日の新規陽性確認者数との相関では-0.924であり、極めて強い負の相関が認められる。7月1日から8月24日にかけての新規陽性確認者数が非常に大きかった分、曜日ダミーと月次ダミーによる変動の影響を凌駕する形で、新規陽性確認者数増加による消費支出の予測値へのマイナスインパクトが如実に表れたといえる。

 7月1日当初は125人だった全国の新規陽性確認者数が、7月末頃には1,000人の大台を突破したことで、消費支出の日別支出の金額は、7月1日時点の5,696円から最小値となった8月10日の時点の2,183円まで、-61.7%も減少している。

 消費支出の日別支出の各月の合計値を比較すると、2020年6月の合計は18.8万円、7月の合計は15.7万円、8月1日から8月24日までの合計は8.6万円である。2020年6月合計と比べると、2020年7月合計は-16.6%の減少、8月1日から8月24日までの合計は-42.2%の減少となっている。

 2019年7月の支出と、モデルで予測した2020年7月の予測支出を前年同月比較してみると、20.1万円から予測値の15.7万円へと、金額では約4.4万円、変化率で-21.8%の大幅な減少となる。同様に2019年8月1日から8月24日の支出と、2020年8月同期間の予測支出で比較すると、17.2万円から予測値の8.6万円へと、金額では約8.6万円、変化率で-50.0%と半減している。

 先述したように、新規陽性確認者数の日々の報道は2020年4~6月で個人消費に24.8%ものマイナスインパクトを与えている。7~8月においても新規陽性確認者数は高い水準であり、引き続き消費へのマイナスの影響は避けられないだろう。しかし、8月以降の新規陽性確認者数は下降トレンドにあり、一部では7月末にピークアウトしたとの見方もある。このまま減少が続けば、9月以降の消費はやや回復していく可能性がある。



特集:コロナ禍の消費を読む


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