2009年で「団塊の世代」の退職期が終わろうとしている。団塊世代が最初に定年を迎えた2007年は、大きな動きが起こると期待された。約50兆円と推定される退職金が株式などのリスク投資に向かう、年金や収入よりも配当や運用益などが増え「家計革命」が起こる、情報を得やすく投資に便利な都会生活と自然に触れあい健康に向く田舎暮らしの「参勤交代」型の住スタイルが生まれて移動距離が増えて移動手段が変わる、生き甲斐を追求する究極の消費はあらゆる商品サービス領域で心地よさ、趣味と確かな素材で選ばれる「選択革命」が起こるなど、彼らのライフステージアップは日本に「消費革命」をもたらすと取り沙汰された。
ところが実際に定年が始まっても、思ったほどの動きはなく、団塊世代向けと称して提供されたで商品・サービスで大きなヒットは生まれていない。実は、こうした商品・サービスは、主に、定年後の悠々自適生活を前提としたお金持ちの道楽のようなものが多かった。しかし、当の団塊世代は、「改正高齢者雇用安定法」が施行されたこともあり、60歳以降の働く場がある程度確保され、継続し働ける機会が増えた。加えて、年金や健康保険制度など社会保障制度への不安は充満している。退職して間もない団塊世代の関心事は、未だに老後の生活を安定させる資金をいかに確保するかにあるようだ。
しかし、「平凡パンチ」などの雑誌、「リーバイス505」などのジーンズ、「コカ・コーラ」などのソフトドリンク、「パイオニア」などのオーディオ、「ホンダ」の低公害エンジン車などをいち早く受け入れ、マス消費市場の形成と巨大化に寄与し、多くの大衆ブランドを確立してきた団塊世代。これからも、人口の多さと長寿であることからして、これまでの常識では計り知れない消費現象を引き起こす可能性を秘めている。先の衆院選で民主党の政権交代を支えたのも団塊世代を含む50代以上の男性であった。改めて、団塊世代の特徴である【1】ケチで、【2】リスク嫌いで、【3】自然が好きで、【4】ムードに弱く、【5】友達夫婦 を確認しておく。保守の風を受けた民主党の打ち出す政策と併せ、この世代に眼をつけておくことも次の消費を読む上で重要である。
団塊の世代はトレンドに敏感である。不況下には生活防衛に走り消費しないことで消費不況を牽引した。今は住宅ローン返済にメドがつき、教育費負担もなくなっているはずだ。しかし、関心はもっぱら老後の生活防衛にある。弊社の2008年調査によれな、個人的な1ヶ月の消費支出の増減では、「減った(27%)」が「増えた(11%)」を大きく上回っており、特に「増えた」は全世代で最も低い。どうしたらさいふのひもを弛めてくれるか。老後の生活費を意識しランニングコストに敏感なので「多少高くともランニングコストが安くなって○○ヶ月(年)使うと元が取れる」、親の介護と自身の老後生活に備えるために「ユニバーサルデザイン」「バリアフリー」、地球環境保護意識が高く、スローライフやロハスなど運動系が大好きだから「地球にやさしく体にもよい」など、説得され易いのはこんなフレーズである。
参照コンテンツ
- MNEXT 消費嫌いのバブル後世代(2009年)
- MNEXT 「団塊の世代」への目のつけどころ(2006年)
- MNEXT 世代論からみた「明治維新から2030年の未来」― 循環史観で先読み(2013年)
- MNEXT 世代論からみた日本人の「カネ嫌い」― 変わる他人への信頼(2013年)
- MNEXT 世代論からみた日本人の涙 ― 泣かなくなった日本人(2013年)
- JMRからの提案 消費を変えるオンリーワン世代(2008年)
- JMRからの提案 40代女性の市場チャンス(2008年)
- JMRからの提案 世代の定義と特徴(2006年)
関連用語
おすすめ新着記事
消費者調査データ サブスクリプションサービス 広く利用される「プライムビデオ」、音楽サブスクには固定ファンも
調査結果を見ると、「Amazon プライムビデオ」が全項目で首位となった。「プライムビデオ」は認知率で認知率は8割強、利用経験では唯一4割強、今後の利用意向でも3割を超えている。
成長市場を探せ コロナ禍の壊滅的状況からV字回復、売上過去最高のテーマパーク
コロナ下では長期休業や入場制限などを強いられ、壊滅的ともいえる打撃を被ったテーマパーク市場、しかし、コロナが5類移行となった2023年には、売上高は8,000億円の大台を突破、過去最高を記録した。
消費者調査データ シャンプー(2024年11月版) 「ラックス」と「パンテーン」、激しい首位争い
調査結果を見ると、「ラックス(ユニリーバ)」と「パンテーン(P&G)」が複数の項目で僅差で首位を競り合う結果となった。コロナ禍以降のセルフケアに対する意識の高まりもあって、シャンプー市場では多様化、高付加価値化が進んでいる。ボタニカルやオーガニック、ハニーやアミノ酸などをキーワードに多様なブランドが競うシャンプー市場の今後が注目される。