格差化と世代交代が育てる差別化ヒット商品
長らく続いた節約消費の空気が入れ替わって「ふつう」の消費が戻ってきた。80年代生まれの上昇志向の強いエイティーズ世代が独身社会人になってお金を使い出し、一方で子育て期がほぼ終わる新人類世代・断層の世代が自身の趣味嗜好に投資しだした。消費不況の十数年という時間は、消費意欲の高い世代が自己投資するライフステージに移行するために必要な、世代交代の時間だったともいえる。2005年、どのようなヒット商品が生まれたのか、背景にある四つの切り口からみてみよう。 | ||||
差別的高付加価値への期待 | ||||
国産車メーカーでは、はじめての富裕層に的を絞ったプレステージブランド展開の試みである「レクサス」が05年8月末に日本市場に導入された。専用のレクサス店143店舗でスタートし発売1ヶ月で月間目標1,200台を大きく上回る4,600台を販売、上々のスタートを切った。最も安いものでISの390万円から、GSは520万から630万である。いずれも引き継いだ旧ブランドよりも100万以上の高価格となっている。 250CC以上のビッグスクーター市場が2~3年前から増加傾向にあったが、05年4月の高速道路の自動二輪車の二人乗り解禁をチャンスとしたメーカーのキャンペーン展開により、対前年400%に拡大している。ヤマハ、ホンダ、スズキの各社が続々と新製品を導入、輸入車も増加して活気づいている。若い頃に2輪車に乗っていた40代50代男性が再度乗り始め、20代30代にまで拡大している。 発泡酒、第3のビールが成長している一方でプレミアムビールがビール、発泡酒、第3のビール合わせた市場においてシェアを倍増させている。主役はサントンリー「ザ・プレミアム・モルツ」である。ヨーロッパで開かれる「モンドセレクション」のビール部門において、日本ではじめて最高金賞を受賞したことではずみをつけた。世界のビールが気軽に飲めるようになって、うすうす思っていた「やっぱり日本のビールは世界レベルでうまい」ということを証明してくれた。元祖プレミアムビールであるサッポロの「ヱビスビール」に加えて、キリンからもチルドビール五品種目の「ゴールデンホップ」が11月末に発売され売り上げを伸ばしている。
プレミアム価値を認知浸透させ実需をつくるには時間がかかる。レクサスについても5年10年経過しないと正否は判断できないが、我々の消費の構造分析から(図表参照)格差化の進行と世代交代の波が、差別的なプレステージブランドが成立する市場の好機をもたらしていると考えている。 |
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