「NEXT VISION 2005」より | ||
見えないニーズを捉える方法 | ||
Richard F. May | ||
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はじめに | |||||||||||||
消費者の目を通じてものを見るためのツールについてご紹介します。それは「アイトラッキング」という新しいマーケティングツールです。消費者の眼球の動きを測定、分析することで、消費者の無意識下にある情報を読み取ります。2005年には、消費者の目から何が見えるでしょうか? 消費者の関心を集める時間は、0.5~1.5秒といったほんの数秒しかありません。この短い時間に消費者の関心を得て商品を買ってもらうためには、どのような広告やパッケージが効果的でしょうか? 「アイトラッキング」は広告やパッケージやホームページの効果を検証するために大いに役立ちます。 今回の話のポイントは次の四つです。
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バイオメトリック・マーケティング | |||||||||||||
バイオメトリック・マーケティング調査と呼ばれる分野があります。この分野には既にふたつのツールが存在しています。ひとつは、このファンクショナルMRI機器 (f - MRI) と呼ばれるものです。実際、現在ラボといったような環境下において、頭の中の血流の分布を見ることが出来ます。そして、ライフスタイルを見極めることが出来ます。ですから、セグメンテーションのアンケートなどを行うことによって、頭の中の血流の分布を見ることが出来ます。しかしながら、ラボでしか出来ない極めて高価なもので、マーケティングツールとして使用するには非現実的でもあります。ふたつめのツールとしては、アイトラッキングといったような、眼鏡運動を記録出来るものがあります。低コストで非常に使いやすいものとなっております。そして非常に多くの分析材料を提供いたします。ですから、医療機器のレベルではありませんけれども、お客さんと関わる。そして消費者を考える際に、非常に十分なる情報が得られるものとなっています。
コカコーラもペプシもラボで、似たような結果を出しております。特定の日本の自動車会社も、ラボにこのようなバイオメトリック・マーケティングを使っています。ライフスタイルをまず確認して、スポーツ好きなのか、シティ派なのか、オペラに行くのか、そういったものをまず確認してから、様々な車の写真を見せます。シビックからミニクーパーまで。様々なものを見せることで、結果を出しています。 バイオメトリック・マーケティングというのは可能であります。皆様方のビジネスでは、現在ではMRIという方法は使わないかもしれませんが、しかしながら、アイトラッキングという研究が可能であるといえるかと思います。その理由を下にまとめました。
アイトラッキング調査の特徴には次のようなことがあります。
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アイトラッキングの技術について | |||||||||||||
どういった会社が既にこのアイトラッキング技術を導入してるのでしょうか。SFっぽいなと思われる方もいるかもしれませんが、既に早期導入した企業があります。ヤフー、イーベイ、オークションサイト、マイクロソフトなどです。それ以外のところでも使われています。
モデレーターが操作するのがモニターです。隣の部屋でモニター出来ます。あるいはモデレーターが隣にいることも出来ます。コンピューター1台で測定可能です。当社では2台使っていて、より多くの情報を収集しています。 原理は図6に示してる通りです。IR (赤外線) 角膜反射検知の原理が使われています。これは50年来知られているものです。安全な赤外線が、LCパネルから眼球の方に行きます。そして背面で反射されます。その動きが探知されます。LCDでセンサーによって探知されます。正確な測定が出来るようになっており、眼球の動きがキチンと捕獲出来ます。 当社のアイトラッキングシステムは、30秒で簡単にキャリブレーション (補正) が出来ます。5年前、これは特殊な技術でした。ですから非常に視力のいい、眼鏡をかけない、コンタクトレンズも使っていない人だけというような制限がありました。しかしながら、今では30秒で誰でもキャリブレーションが可能となっています。ですから、クライアント自身にキャリブレーションをしてもらっています。 図7がキャリブレーション画面です。2つの白丸は、機器が被験者の両目を認識したことを示します。ですから、この白丸は、目の動きにあわせて動きます。システムが両目を捉えますと、スタート出来るわけであります。多くの測定が得られることになります。そしてこの刺激物に対するエクスポージャーが得られるわけであります。アイトラッキングは、本当に、短時間で出来ます。 そして背景にありますソフトウェアですけれども、テストデザイナーというものがありますので、テストのカスタム化も出来ます (図8)。テスト・モデレーターがあります。フォーカスグループであれば、いわゆるモデレーター役の人がいるわけですが、ソフトウェアがそのような情報提供をしています。データマネージャーがありまして、XYZのデータを収集します。それからプレゼンテーションの部分が、インサイト・レポーターと呼ばれています。そして、マネージメントに対してどこが良かったのか、広告の改善点は何なのかを見ることが出来るようになっています。 | |||||||||||||
眼球運動と消費者のニーズのマッチング | |||||||||||||
アイトラッキングは何を測定できるのでしょうか? 目で見れるものは何でも測定出来ます。例えば次のようなものがあります。
このような新しいマーケティングツールがあったとしましたら、どのように利用したいかっていうことがあります。もちろん、我々としては、基本的にはその、宣伝の効率化を目指すというわけであります。もちろん、どのぐらいのヒット数があったかなどは、普通のウェブサーバー、ウェブサービスからそういう情報を得られるんですが、アイトラッキングはちょっと違います。その、ビジュアル的にどういうインパクトがあるか、どういう効果があるかということを、キチンと説明してくれるような、測定システムです。つまり、見てる人は、我々の広告を見たのか、どのぐらい長く見たのかっていうような情報を、我々にくれるわけです。つまり、我々が、例えばパッケージの素晴らしいデザインを使ったとしましても、カンヌ広告祭で何か受賞するような素晴らしいデザインかどうかはとても重要なことかもしれませんが、それより、実際に消費者が、我々の素晴らしいデザインを見てくれたかどうかを知りたいのです。どのぐらい見てくれたのか、気がついてくれたのかということを測定してくれるためのツールであります。アイトラッキングはそのようなツールであります。 我々のアイトラッキング技術を使いまして、既存のデザインを分析して、そしてその結果を持って、クリエーターの方に戻りまして、このデザインは上手く行ってないから、全部破棄するっていうことではなく、こういう所が弱みなので、これを改善しましょうっていうような、非常に効率的な使い方があるかと思います。
先ほど申しましたように、ある会社のデザインは芸術性が高く評価されたかどうか、というような話をしてるのではないんです。そうではなく、棚に商品が並んだ時に、お客様の注目を得られるかどうかという話をしているのです。ライバル他社のものに比べて、目を引くものなのかどうかっていうことを知りたいのです。 | |||||||||||||
アイトラッキングで現在どの程度まで分析できるか | |||||||||||||
では具体的にどのようなデータが収集されるのでしょうか。アイトラッカーは、色々な目の動きを把握、測定出来ます。何が見られたのか。何が見られなかったのか。更に、目の動き、例えば、ある中心点に留まった時には、読んでたのか。あるいは、眼の脇の方からちょっと見てただけなのか。つまり、ひとつのスポットに集中して眼が留まったのか、つまりきっと読んでて理解してたのか、などを測定出来ます。目がどういう所に動いただけではなく、その動いた所で、どういうようなことを消費者は考えていたのかっていうことを、ある程度把握出来るようなデータを出してくれます。
医療学者または心理学者は、このような目の動きのデータを見まして、これも色んな記憶に関わることだとも言っています。眼球というのは非常に強い筋肉であります。非常に早い速度で視線を変えられます。その動きをアイトラッカーはキチンと測定出来ます。そして、その動きを細かく分析することが出来ます。心理言語学者によりますと、きっと皆様は、本を読んでる時は、このように目が動いてるだろうという風に思うかもしれません。 しかし、医学は違う分析をしております。読む時には、一箇所をパッと集中して見て、そしてまた次の所に移って、パッと情報を得るというのが、本当の目の動きだそうです。ですので、例えばヘッドラインとかロゴを見る時には、ホントに一部しかパッとしか見ないのです。大きなページや大きなスクリーンを見る時には、目が留まる場所と、素通りする場所があります。 人間の読み方とは? 心理言語学調査によると、次のようになっています。
しかし、この数年間で、もっと詳細な分析をするための技術が出てきています。そして、普通のPCでも使える非常に高性能なソフトが出来まして、このような分析が可能になりました。
そうであっても、まだこういう機械は、非常に珍しい、まあちょっと面白いものだけど、どういう風にそれを利用出来るのかというのがよく分からなかったわけです。最近デジタル化が進みまして、特にこの過去3年ぐらいから、利用方法がどんどん開発されました。 眼球運動研究には四つの段階がありました。
図12の図面を色別に分けると、図13のようになります。やはり、左上の角、これが1番優先順位が高いです。最も良く人が見る場所です。ウェブページであれば、次はこの辺りが優先順位としてよく見られる所であります。そして、1番右側の方、そして1番下側の方は、優先順位が低い部分でございます。このようなデータが、ホントにこの3年間、色々蓄積されたわけであります。 | |||||||||||||
アイトラッキングが皆様の仕事にどのように役立つのか | |||||||||||||
図15の下図がヒートマップです。左上のテキストの部分が凄く注目されています。ここがとても読まれていることが分かります。しかし、アイコンは使わなかったっていうこともいえそうです。アイコンを使わずに、少し軽費を削減出来たのではないかと思います。一生懸命読んでくれたことがよく分かります。赤い部分が沢山あるから、分かると思います。 そして右側に2人の俳優が見えまして、もちろんそこも注目されています。右下の車の宣伝があるところは、意外と良く見てもらえています。2人の俳優の位置と、上手く関連したからではないかと思います。
会社でありましたら、経費を色々有効活用させられるということがあります。つまり、ヒートマップで同じ広告を分析するわけなのですが、やはりスターの顔だけではなくて、会社のロゴマークまでもちゃんと見てくれるかということを確認出来ます。ですので、このようなホットスポット、ヒートマップは、非常に分かりやすいマーケティングツールだと思います。 もうひとつはゲイズパス。ゲイズ道。目の動きを分析することもとても重要です。
これをヒートマップとホットスポットで分析しますと、もしかしたら女の人の方が注目ばかりされてますので、あるいは色んな対処方法を考えられるかもしれません。例えば彼女があんまり注目されてるので、もしかしたら彼女にもうちょっと洋服を着せるとか、あるいはロゴマークの位置をちょっと変えるとかっていうことを考えられるかと思います。 アイトラッキングによるデータ収集のポイントとして、主に次の4つが挙げられます。
次に、新聞はどういう風にアイトラッキングされてるかという例をお話しします。新聞は、上のヘッドラインの部分が非常に注目されています。そして、見出しの部分読み、またヘッドラインに戻っていく様子が観察されました。この一連の作業は非常に短時間に行われました。注目を惹きつけるために要する時間は、限られてるといえるでしょう。 アイトラッキングによる面白い発見をまとめると次のようになります。
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おわりに | |||||||||||||
このようなアイトラッキング・ソリューションのテクノロジーを日本で導入しているのは当社のみです。 当社によるアイトラッキング ソリューションは、「ソフトウェア/ ハードウェアシステム+リサーチ設計」です。調査の大まかな流れをまとめます。
当社のアイトラッキング・ソリューションの利点は、主に次の5点です。
(2005.1)
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