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「NEXT VISION 2007」より
進む生活の階層化、消費を牽引する成熟層
大場美子
本コンテンツは、2006年11月15日に行われた当社イベント「NEXT VISION 2007」の講演録と、同日使用したプレゼンテーションをもとに構成したものです。
構成
 はじめに
 1.変わらないこと・変わったこと
 2.四つの市場トレンド
以下は会員専用コンテンツでごらんください。
 3.消費リーダーは成熟層
 4.不安消費から趣味消費へ
 5.ワン・トゥ・ワンからネットワークへ
 6.機会費用が変える購買行動
 終わりに
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はじめに
 ただいまご紹介にあずかりました大場です。
 本日は消費社会白書2007の中のエッセンスを、ご来場いただいたお客さまだけにご案内するものですが、最初に当社の調査研究の特徴・ポジショニングを申し上げます。
 三つあります。
 ひとつは、「半歩先」をねらっています。未来予測では実務に遠く、かといって現状の説明に止まっていては情報価値がないからです。
 ふたつめは、リサーチにもとづく、ということです。
 毎年継続して行っている調査研究の蓄積を踏まえて、データにこだわっています。
 最後が、継続性です。
 昨年言ったことをさておいて、毎年主張がかわる、というのもおかしなことで、何が変わって何が変わらないのか、を明らかにしていく、ということです。
 では、これから消費市場の現在とこれからについて、私と松本の2人でお話いたします。

1.変わらないこと・変わったこと
図表1.変わったこと、変わらないこと
 はじめに、価値意識や消費の動向について、変わらない長期トレンドと、変わったことをご紹介します。
 消費社会白書2003から2007まで4年を通じて変わらないことは三つ、
  1. ライフコースの多様化
  2. 消費の成長が持続している
  3. 「格差」の認知浸透
 ライフコースとは、学校卒業、社会人、1人立ち、結婚、子育て、リタイアといった人生の選択が多様化していて、標準的な家族形成のコースだけでなくなっているよ、ということです。
 消費の成長と、「格差」については、後でデータをご紹介します。

 変化していることとして、三つあげられます。
  1. 人々が思う「格差の要因」が知識情報から親の階層に
  2. 収入によって階層意識が明確になってきた
  3. 40代を中心とした成熟層が消費を拡大していること
 新しく生まれたことは、
  • 成熟世代を中心とする「趣味」消費タイプが消費リーダーとして登場したこと
です。  では、松本から、変わらないこと、変わったことをしめすデータをいくつかご紹介します。

図表2.持続する消費の成長
 まず、変わらないこと三つの中からふたつデータをご紹介します。
 ひとつめは消費の持続的な成長です。こちらは実質GDPと民間最終消費支出の伸び率の推移です。四半期データでみると多少山谷はあるものの、長期傾向として対前年成長を続けています。
 02年2月に始まった今回の景気拡大は今月で58ヶ月となり、高度成長期の「いざなぎ景気」の最長記録を更新する見込みとなっています。世の中では、今期の民間最終消費支出がマイナス成長となったことから景気の下ブレリスクがあるのではないか、という議論もなされていますが、弊社では、違った見方をしています。

図表3.消費を支えるメカニズム
 消費増加の要因を分析したところ、高所得層と中低所得層では影響する要素が異なることがわかっています。
 高所得層では、企業の好業績が収入の増加や保有資産の価値上昇といった実際の所得・資産の拡大となり、それが消費増加につながります。一方、中低所得層では収入の伸び悩みというマイナスの事実はあるものの、雇用が今後増加していくだろう、というマインドが消費の増加につながっています。所得・資産の増加が消費の増加につながる高所得層、雇用拡大の見通しが消費につながる中低所得層、現在はどちらにとっても消費を減少させる要素は少ないと考えます。

図表4.「格差化」の浸透
 ふたつめは、「今後格差がますます広がっていく」という認識の浸透です。
 格差について「拡大しているのか」か否か、是正すべきかどうか、といった議論がありますが、今後格差が拡大していくであろうという認識は、8割以上の共通認識となっています。「そう思わない」はわずか1%にすぎません。また、「格差が広がっていくのはしかたがない」と消極的ながら受容しているのが59.3%、そう思わない人の16.9%を大きく上回っています。格差の拡大は、受容せざるを得ない現実として受け止める人が過半数を超えているということです。また、この傾向は世代を問わずに広がっていることがわかっています。

図表5.格差化要因の固定化
 次に変化していること、三つの中からふたつをご紹介します。
 ひとつめは、格差の固定化です。何によって格差が広がっていくのか、という「格差」の要因について昨年からの変化をみてみると、知識や情報といった自分で変えられることから、親の階層の結果という認識へと変わってきています。
 昨年は、「インターネットなど最新の技術や情報を使いこなすスキル」が38.6%で第1位だったのが、今年は27.6%減少、最大要因は「家柄・血筋」になっています。格差の要因が、自分では変えられない、より固定化したものとして捉えられるようになってきたということです。インターネット、投資などの知識やスキルを利用して、一時ホリエモンやら村上ファンドやらといった人たちが時代の寵児となりましたが、そのことが返って情報スキルや投資などによって手にいれた地位のもろさを印象づける結果となってしまったのではないでしょうか。

図表6.階層意識の鮮明化
 次に、より強まっているものとして、階層意識の変化があげられます。
 階層意識では、「中流意識の階層分化」が起きています。
 自身の階層を上・中・下といった基準で評価してもらった結果を2001年と2006年で比較すると、「中の上」が減少し、「中の中」と「中の下」が増加しているという傾向がみられます。「上」は少数で一定、「中」の三つ合わせた総量もほぼ一定で、増えているのは一番下の「下」ではなくて「中の下」なのです。「中」の中で「上」「中」「下」の構成が変化しているということです。
 その背景には、収入によって階層意識が鮮明化していることがあります。

図表7.世帯年収と階層意識の鮮明化
 年収ごとに、どのような階層意識がもたれているのかを集計したのがこちらです。
 上が2003年、下が今年のデータです。
 2003年は年収と階層意識の一致度が低いところもみられるのに対して、今年は世帯年収が200万~500万の間ならば「中の下」、500~1,500万の間は「中の中」、1,500万円以上ならば「中の上」に集中しています。年収によって自身の生活レベルを規定する度合いがより強まっているということです。
 みんなが「中流」だと思っていた頃とは違って、収入格差は歴然と存在し、マスコミの報道やブログなどの情報により、金持ち層の生活もみえてきました。その結果、階層格差がはっきり認識されるようになったものと思われます。
 以上をまとめると格差が拡大するという認識はここ数年変わらず広く浸透しています。その上で変化しているものとして、収入による階層意識が鮮明になったこと、その収入格差は親の階層によって決まる、という階層固定化の傾向が強まっていることがあげられます。
 こうした変化は、後にご案内する生活の趣味化の促進要因となっていると考えられます。

2.四つの市場トレンド
図表8.転換すべき四つのポイント
 以上述べた変わらない長期トレンドと、変化していることの上で、マーケットアプローチ上の着眼点について、転換すべき四つのポイントについてお話しします。
 第一は、注目市場として「下流」から、消費リーダー層としての「成熟層」への転換です。
 第二に、長らく続いた「不安消費」から、好き嫌いにこだわってものを選ぶ「趣味型消費」への消費トレンドの転換。
 第三は、消費者の多様性と個別性に着眼した「ワン・トゥ・ワン」というコンセプトから、「ネットワーク」アプローチへの転換です。
 最後四つめが、独身社会人、子育て主婦といったライフステージから、機会費用という見方の転換
です。順にご紹介します。

(2006.12)

本稿は当社代表・松田久一からの貴重な助言のもとに執筆されました。ここに謝意を表します。あり得べき誤りは筆者の責に帰します。

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