消費性向の低下は、消費は所得に依存するという一般的な前提が崩れ、所得と消費の間が乖離していることを示す。実際に所得と消費の変化傾向をみるために、70年時点の可処分所得と消費支出金額をそれぞれ1.0として伸び率をみると、99年の可処分所得は4.67倍、消費支出が4.19倍と乖離が拡大している(図表2)。グラフで明らかなように80年代後半から所得と消費の間に乖離が生じ、90年代に入って一層鮮明になった。常に所得の増加率よりも消費が下回り、所得が増加しても消費が増えない。これが消費不況といわれる90年代の消費動向である。
次に家計費を、必需的支出、選択的支出、家計黒字に分けてその構成比をみてみると(図表3)、99年には必需的支出が約40%、選択的支出30%、黒字率30%になっている。この10年の構成比の変化では、必需的支出が減少し黒字率が拡大しており、黒字の中で貯蓄率が増加していることが確認できる。
90年代消費の背景に、家計費の長期的な構造変化があって、その結果、資源配分を決める主体としての個人の消費意識や価値意識が消費に与える影響が大きくなっていると推測される。貯蓄は「未来の消費」といえるが、昨今のほぼ0%という超低金利状況からすると貯蓄は経済合理性に合わない。「未来の消費」というよりは消費の「延期化」が起こっていると捉えた方がよいと考えられる。
本コンテンツの全文は、メンバーシップサービスでのご提供となっております。 以降の閲覧にはメンバーシップサービス会員(有料)ご登録が必要です。
|