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日本国内で新型コロナウィルスの感染が拡大している。2月26日からの大規模イベント自粛、2月末からの小・中・高校などでの一斉休校、休業や営業自粛、外出自粛など、その影響は多方面にわたる。
このような中で、消費者の行動にも変化が現れている。全体として消費意欲は弱まっているものの、食品・飲食への支出は増加し、消費の「イエナカ・シフト」が鮮明だ。
2020年3月に行った弊社インターネット・モニターを対象に行った質問紙調査の結果から、感染拡大によるこのような消費者の行動変容を明らかにする。
調査は、2020年3月19日から3月25日にかけて実施した。感染拡大が本格化してからの、消費者の行動変容の起こり始めの1ヶ月弱の状況を捉えたものということができる。
日常生活での行動として提示した計14項目の選択肢を対象に、新型コロナウィルスをきっかけに行ったこと、あるいは、やめたことの回答率をみてみる。
上位には、「マスクをつけて出かけること」(回答率:43.5%)、「アルコール消毒液やアルコール入りウェットティッシュなどで手をふくこと」(40.4%)、「咳エチケットを心がけること」(35.2%)、「休日は家の中だけで過ごすこと」(21.5%)などが挙がる。初めの3項目はいずれも、新型コロナウィルスへの感染防止対策として典型的な行動であり、今や消費者の間で新たな日常生活習慣として定着しつつある行動でもある。
4番目の「休日は家の中だけで過ごすこと」は、外出自粛の行動を体現している。その後に続く、「友人や知人とのやり取りを電話やネットで済ますこと」(8.0%)、「買い物はネットや通販で済ますこと」(7.9%)、「音楽、映画、演劇、ゲーム、漫画、アニメなどのコンテンツを視聴すること」(7.4%)なども、外出自粛を反映した行動の具体例でもある(図表1)。
図表1.新型コロナウィルス感染拡大をきっかけとした行動変容
他方、新型コロナウィルスをきっかけにやめたことの上位には、「外食に出かけること」(回答率:20.3%)、「友人や知人の家へ出かけること」(12.1%)、「1時間以上かけて買い物に出かけること」(11.4%)、「自宅へ友人や知人を招くこと」(9.3%)などが挙がる。これら4項目からは、消費者が自身だけでなく他者とのつきあい方の変化からも、外出自粛の姿勢がうかがい知れる(図表1)。
感染拡大をきっかけに顕在化した、消費者の日常生活行動から見えてくるのは、「外からウチへ」の行動変容、外出を自粛しお家で過ごそうとする消費者の姿である。これはある意味で、いま現在世間で本格化している「Stay Home」のムーブメントを先取りしたものに他ならない。
「外からウチへ」の消費者の行動変容の影響は、支出行動にも色濃く現れている。
ここ1年の間での消費者の支出意欲の変化に着目し、2019年3月調査から2020年3月調査にかけて、1年前と比べた世帯支出の増減の構成比の変化をみると、「増えた計」の比率は減少している(2019年3月調査時点:27.8%→2020年3月調査時点:24.4%)。
他方、「変わらない」の比率は上昇している(2019年3月調査時点:63.7%→2020年3月調査時点:66.7%)。1年前と比べて、消費者の支出意欲が弱まっていることは確かだ。
消費者の支出意欲が全般的に弱まっている中でも、支出が伸びているカテゴリーと、支出が落ち込んでいるカテゴリーとが、併存している。
1年前と比べて世帯支出が増えた項目の上位をみると、「食品・飲料への支出(外食を除く)」が24.0%と突出して高く、続く「外食への支出」(10.9%)以下を大きく引き離している。支出が増えた項目の上位には、必需性の高い日常的な支出に類するものが目立つ(図表2)。
図表2.支出増加を主導する食品・飲料、支出減少の中心となっている外食
1年前と比べて世帯支出が減った項目の上位をみると、「外食への支出」が20.4%と突出して高く、続く「旅行などレジャーへの支出」(10.2%)以下を大きく引き離している。支出が減った項目の上位には、不要不急の選択的な支出に類するものが目立つ。
ちなみに、「外食への支出」は、1年前に比べ減少した層の比率(20.4%)が、増加した層の比率(10.9%)を大きく上回っていることから、支出減少が際立っているカテゴリーとみなせる(図表2)。
消費者の支出行動の変化として、食品・飲料の支出増加が際立つ一方、外食が支出減少の中心となっている。支出増加と支出減少それぞれの上位の項目からは、選択的支出から日常的支出へのシフトもうかがわれる。こうした支出行動の変化、すなわち、消費の「イエナカ・シフト」の動きも、新型コロナウィルス感染拡大を契機に顕在化している、「外からウチへ」の消費者の行動変容に連なるものといえるだろう。
感染拡大の動きは、新年度に入ってからも続いている。4月7日から7都府県を対象に先行して発令された緊急事態宣言は、4月16日には全国へと拡大された。それを受けて、外出自粛や営業自粛も一層強まっていることから、消費の「イエナカ・シフト」の動きにも、拍車がかかっていると考えられる。
緊急事態宣言に基づく自粛要請は当座、5月6日までとされてはいるが、更に延長されるとの見通しが優勢だ。新規感染者数がピークを打ったとの見方も一部で出てきてはいるが、コンセンサスを得るには至っていない。
米ハーバード大の研究チームによる予測では、外出規制などの措置を2022年まで断続的に続ける必要がある、としている。また、感染症の専門家の間では、収束するまであと2~3年はかかりそうだ、との見方が有力だ。
収束の見通しが立たない限り、外出自粛や営業自粛は続くと見込まれる。その間は、消費の「イエナカ・シフト」の動きも続くこととなるだろう。少なくとも2020年の間は、こうした影響を引きずる可能性は高いと予想できる。
特集:コロナ禍の消費を読む
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