2004年度上半期ヒット商品 | ||
大場美子 | ||
その頭文字は"S・L・I・D・E・R"-消費回復が一気に加速していく様に照合する。 "Slow Life"(スローライフ)アンチ・ファーストフード文化運動のスローガンとしてイタリアから世界に発信されてきた「スローフード」。これを語源として、ここ日本では、安心・安全、健康志向、懐古志向、食や住・余暇にほどほどに手間ヒマをかけるゆとりをもつ生き方を志向するものとして、角がとれて一般的に「スローライフ」志向が浸透しつつある。例えば数年前から続くガーデニングブーム、市場規模が2,000億円を超え成長が続いている。 いわゆる「冬ソナ」、俳優の魅力やストーリー展開などヒットの要因はさまざまあろうが、そのひとつには日本のドラマでは失われた「純愛」感情表現の豊かさがある。スターがスターらしい笑顔を振りまく様も懐かしい昭和の時代に失った感情への懐古があるのではなかろうか。 "Luxury"(贅沢な必需品)「新型クラウン」が上半期新車販売台数で5位にランクインした。多数のグレードが用意されており約330万から5百数十万までのラインナップである。4位までが「カローラ」「キューブ」「ウイッシュ」「フィット」といったリッターカーや小型車に互しての7万台は大ヒットである。ワコールの高級ランジェリーブランド「WACOAL DIA」の銀座直営店も上々のすべりだしを切ったと言われる。そのコンセプトは「最高峰のデザインとおもてなし」である。 コストパフォーマンスや低価格の魅力ばかりが強調されてきたが、そろそろ新しい贅沢品が求められていたのだ。 "Informative"(情報系飲食品)花王の「へルシア緑茶」、昨年5月に首都圏で限定発売後、2月から全国展開、3月末までに累計200億円を突破した。その他アミノ酸飲料や茶飲料などヒット商品がさまざま生まれている。いずれも「カテキン」、「特定保健用食品」など、体によい根拠となる情報を販売しているともいえる。"Digital"(デジタル家電)DVDレコーダー、液晶TV、プラズマディスプレイTVなど、昨年から消費の牽引者として話題にのぼっているがそれぞれ対前年150%を超える勢いで成長を続けている。夏のボーナス商戦の目玉となった。"Enthusiast"(おたく)クールジャパンイメージを世界に発信した作り手達の多くは、断層の世代(40代から50代前半)である。この世代の特徴のひとつに「おたく」志向がある。かつてはプロ仕様だったデジタル一眼レフカメラ「ニコンD70」、伊勢丹メンズ館、月刊誌「LEON」などのヒットは、このおたく系おやじ世代が支えているといわれている。"Risk"(リスク商品)金利1%以下の預貯金に巨額の金融資産の多くを委ねてきた超リスク回避志向の日本人と思われたが、ここにきて、個人の資産運用において、リスク商品が徐々に拡大しつつある。ネットを通じた個人の株取引が拡大している。都心高層マンション供給も未だ勢いがとどまらず、高齢の富裕層だけでなく都心勤務の30代層が時間の価値を買うという理由で購入しているケースが多いという。特定層からの消費回復弊社消費者調査によると、今後「景気が良くなっていく」という見通しをもっているのは、6月時点で34%である(どちらともいえない30%、そう思わない30%、わからない6%)。全般的にみてこの時点で良い見通しを持つ人が、そうでない人を上回った。
「よくなっていく」という見方が多い層は、金融資産家・ネットトレーダー、経営者・管理職、DINKSカップルなど、かれらはよい見通しが過半数を超えている。ついで、個人年収700万以上層、団塊ジュニア(29-33才)、S40(ヨンマル)世代(30代)である。 一方、悲観的な見通しが多いのが「専業主婦、パート・アルバイト」「リスク資産非保有」の層であった。 株価上昇や企業業績回復の情報に接触する機会の多少や雇用条件の差などが世の中の見方に大きく反映していると思われる。
同様に消費回復は、特定層からはじまっている。まだら模様の消費回復期のマーケティングアプローチは、特定層を見極めた、ターゲットシューティングが成功の鍵となるだろう。 (2004.07)
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