「市場溶解期の再成長マーケティング」講演録 報告1.
主任研究員 菅野 守
本コンテンツは、2017年11月1日開催の「第11回ネクスト戦略ワークショップ」の講演内容に加筆修正を加えたものです。
価値意識や消費に対する意識の変化、今の消費をリードしているのは誰か、その人たちがどんなトレンドを生み出そうとしているのか、などについて最新の「消費社会白書2018」から、報告したいと思います。
まずは価値意識の変化です。弊社は消費社会白書を2004年から刊行しています。全国2,000サンプルのオリジナル消費者調査がベースとなっています。今年の調査結果からいえることは、今までとはだいぶ違った価値意識を持った世代が登場してきたということです。昭和的価値観が小さくなり、「アイデンティティ志向」が高まっています。
さまざまな価値観について「そう思う」と答えた人の合計を賛成率と呼んでいます。賛成率の今年のトップは「温かな家庭や社会をつくりたい」、次いで「理想や夢を持って生活したい」でした。毎年、このふたつが大きいのですが、これが低下傾向にあります。調査を開始した2004年は、9割近くが「温かな家庭や社会をつくりたい」について、「そう思う」と答えていました。しかし、今年は04年と比べて18%低下しています。「理想や夢を持って生活したい」も同じく9割近かったのですが、10%弱低下しています。関連する他の変数の低下傾向も含めて、昭和的価値観としての家族主義と理想主義の低下と解釈しています。
今年の特徴をさらに詳しく見ると、世代によって価値観に大きな差が出ています。昨年のリオオリンピックで活躍した卓球の平野美宇、伊藤美誠、陸上の桐生祥秀ら1994年から2002年生まれの15才から23才を、「リオ世代」と名付けています。その価値観をみると、「自己実現志向」が他の年代に比べて高いことが分かりました。「リオ世代」のひとつ前の「ゆとり世代(24才から29才)」はあまり高くありません。そのため、「リオ世代」と「ゆとり世代」の間に、断裂が生じているのではないかと考えています(図表1)。
もうひとつの断裂が、「団塊ジュニア(39才から46才)」と「新人類(47才から56才)」の間にあります。団塊ジュニアは、団塊世代の子供で、今の社会のコアの部分になっています。このふたつの世代を比べると、ものの豊かさより心の豊かさを大事にしたい、義理人情を大切にしたいという「互助互酬」の意識で、差が出ています。具体的には、「新人類」以降の世代ではより高くなっています。
これからの消費を牽引していく「リオ世代」にフォーカスしてみます。特徴として、「ナンバーワンよりオンリーワンになりたい」というアイデンティティ志向が、10代に限ってみると過去5年間で15%上昇しているということが挙げられます。一方で、この世代は周りの目を気にして、自分をどうポジショニングするかということに敏感です。消費の面でも、この世代の特徴が影響を与えているというデータが出てきています。
顧客接点のメルティングとアイデンティティ消費
- 発刊以来15年間の知見とデータから「今」を鋭く分析し、「半歩先」を提案
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