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異業態提携と大規模化探る百貨店業界
課題は「生活の趣味化」への対応
大澤 博一


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図表 全国百貨店の売上高推移(前年同月比)
 全国百貨店の売上高は昨年9~12月まで4ヶ月連続で前年同月比プラスと好調である。営業利益も大きく増加している。
 しかし、好調の要因は、個人消費の回復に支えられたものであり、百貨店本来の営業力が高まったためではない。利益も業務改革によるコスト構造の変革によるものである。依然として人気ブランドの取り込みのようなブランド依存の体質から脱却できていない。
 百貨店各社は、ミレニアムリテイリングによる異業態(セブン&アイ・ホールディングス)との統合効果をまだ静観しているようだ。現在、百貨店業界の動向は、大きくふたつ挙げられる。
 第一に、異業態との提携である。これまで百貨店は同業態との再編・提携が主流であった。1994年の三越大丸、96年の伊勢丹阪急百貨店の業務提携など、バックヤード業務の効率化のための提携や、2001年の西武百貨店そごうグループの包括業務提携、05年の伊勢丹による岩田屋の子会社化など、救済による再編であった。
 しかし、現在、異業態とのノウハウの補完を狙った再編が模索され、ショッピングセンター(SC)を軸とした提携関係がイオン主導で既に始まっている。イオンは大阪府堺市に阪急百貨店とジャスコの2核型SCを開設。来年には東京都武蔵村山市に三越とジャスコのSC展開が決まっている。このほか既に関東圏で5店舗の出店が決定。さらに、グループ再編を継続している電鉄系百貨店との連携の可能性も噂されている。
 第二に大規模化である。百貨店各社はこれから大規模な増床を計画している。東京の主な百貨店では、今年の新宿高島屋の全面改装。銀座三越は09年に新館を建て、約5万平方メートルに増床する。大丸東京店も07年秋に第1期を開業し、売り場面積を現在の1.4倍にする。
 百貨店業界はSCを媒介とした異業態との提携と大規模化というふたつの方向で、営業力を高めようとしている。

消費者ニーズに応える商品と接客
 現在の消費トレンドは、身の回りを納得いく商品で固め、生活全般を自らの趣味・テイストに合わせて演出するという「趣味化」である。異業態との提携や大規模化で得られるのは規模の利益であり、「趣味化」への根本的な対応にはならない。
 そこで注目したいのは、以下の三つの百貨店である。
 伊勢丹は、消費者の一歩先を提案する態勢を整え、百貨店本来の姿を実現している。好調のメンズ館はブランド依存の売り場から脱却し、消費者の求める高いレベルのニーズに対応している。その強さの秘訣は、メンズ館の30人のバイヤーにある。バイヤーがいち早くトレンドを読みとり、最適な商品を全世界から発見し、消費者に提案する仕組みが整っている。
 新宿京王百貨店は、中高年女性にターゲットを絞り、ウォーキングシューズなど健康をテーマにした売り場に力を入れている。また体形に合わせて商品を選択できるようにサイズを豊富に揃えるなど、ターゲットの購買意欲を高める工夫を行っている。
 京急百貨店は、ここ数年一貫して増収を達成。徹底した地域密着の取り組みが奏功している。地元の消費者が欲しいものを素早く取り揃えると同時に、それを実現する組織の身軽さがポイントである。
 共通することは、特定層の趣味化、消費行動に対応できる高度な品揃えと接客力、それを支える組織を実現していることである。
 好調な百貨店業界であるが、生活の「趣味化」に対応できる営業力づくりができるかどうかが、生き残りの最大のカギになるだろう。
(2006.02)


本コンテンツは、週刊エコノミスト 2006年2/21号に掲載された論文を、編集部の許可を得て転載しています。

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