図表1.店舗大型化のもとで伸び悩む小売業の収益性 |
経済産業省「商業統計調査」をもとに90年代以降の小売セクターのマクロ動向を整理すると、年間商品販売額はほぼ横ばいで97年をピークに緩やかな減少傾向にある。1事業所当り売場面積の伸び率は91年比で195.2%、年率換算で+39.0%成長という驚異的なペースで拡大する一方、売場面積当り年間販売額の伸び率は91年比で68.4%、年率換算で-30.2%成長と急速に下落している(図表1)。
90年代以降、小売業では店舗の大型化が進んだものの、生産性の低下に一向に歯止めがかからない。
第一は、寡占化のなかでの主役交代である。小売企業上位10社の07年度売上は約20兆円で全小売販売額の15%を占めている。この間のグループ化や再編がすすんだ結果といえる。消費不況で競争は激化し、業態を超えた再編は今後もすすんでいくだろう。そのなかでリーダー企業の交代がすすむ。10年前の上位10社は百貨店と総合スーパーで占められていたが、現在はヤマダ電機、エディオン、ヨドバシカメラの3社が入っており、ヤマダ電機は2桁の成長である。逆にイオン、ダイエー、ユニー、Jフロントリテイリング、高島屋、三越伊勢丹ホールディングスはこの中間決算で減収ないしは減益に陥り、コンビニエンスストア事業が好調だったセブン&アイのみがかろうじて増収増益となっている。
第二は、業態進化である。百貨店は改装投資を中止し、総合スーパーは閉店ラッシュを迎える。ショッピングセンターも出店ペースは一気に落ちる。逆に成長しているのは家電量販、ドラッグストア、食品スーパーなどの専門量販店、それにコンビニエンスストアとネット通販である。とくにネット通販は、経済産業省調査によれば3.3兆円、前年比+22.1%と高成長している。ライフスタイルにあわせた業態進化がすすんでいるのである。
第三は、地域格差にもとづく個店格差である。長期低迷傾向が続いているものの、地域により様相は全く異なる。商業統計調査から02年と07年の成長性を都道府県別にみると、成長しているのは15都道府県、最大値は三重県、沖縄県の+7.7%、最小値は島根県の-9.8%とその差は17.6%に拡大している。伸びている地域と低迷する地域と間で、成長率の格差が鮮明となっている。あらゆる業態で既存店売上が低迷しているのは、この地域格差による影響が大きく、09年はこの傾向がより鮮明になるだろう。
本稿は当社代表・松田久一からの貴重な助言のもとに執筆されました。ここに謝意を表します。あり得べき誤りは筆者の責に帰します。